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「食べるのよ」
「えっ?」
「黒焼きにしてね。そうすれば、綺麗になって素敵な恋人ができると思うの」
「み、美加子ちゃん…?」
「私、恋がしたい」
十和子は思わず顔を赤らめた。しかし、美加子のほうには恥じらう素振りは一切ない。
妹の落ち着いた態度に、十和子の動揺はすぐに治まった。
「美加子ちゃんがそんなことを言うのは何十年ぶりかしらね。でも…」
十和子は、空高く飛んでいるコウモリに目をやりながら、静かに言った。
「恋の妙薬はコウモリじゃなく、イモリの黒焼きよ」
美加子が切なそうに訴えた。
「あのコウモリは特別なの。なんとなく、そう感じるの…」
自分が感じていることを、十和子に理解して欲しいのだ。
「美加子ちゃんが言うなら、きっとそうなんでしょうね」
十和子は優しくうなずいて、そして、夢を見るような目で言った。
「私は河童の胆嚢を手に入れたいと考えてるの」
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