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花嫁用の衣装合わせ部屋で、ウエディングドレスを着た淑子さんがカーテンの奥から出てきた。
「まあ、素敵…」
淑子さんは顔にも体にも年相応の衰えが出ていたが、美加子は本気で花嫁姿の淑子さんを褒めた。
「お似合いですよ」
このカップルを担当している小竹という40代の女性スタッフも、満足げに声をかけた。
「…」
淑子さんは何も言わない。はにかんでいるのだろうか。
結婚式が近付くにつれ、淑子さんがどんどん綺麗になっていくのを美加子は見ていたのだが、今日の淑子さんは元気がなかった。
それに、前回顔を合わせた時よりも、少し老けて見える。
「お気に召しませんか?」
「いえ、そんなことは…」
小竹が尋ねると、淑子さんはうつむいたまま答えた。
「こちらに大きな鏡がありますので…」
淑子さんが、ふと窓の外に目を向けた。そして、数秒ほど、どこか一点をじっと見たが、すぐに鏡のほうを向いた。
鏡を前にしても、淑子さんはやはりぼんやりしたままである。
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