小説を書かなくなった彼女との１０日間

【 ８日目：タピオカ星人 】

「うぅ～」

　さすがに７日続けて悪夢を見ると、いい加減慣れてくる。今日も、ヌルヌルしたカエルちゃんの卵みたいなタピオカ星人が、俺の体をニュルニュルと回転し続けて、その何とも言えない感触が肌に残る。

　しかし、悪夢を見続けると、悪夢ではなくなってくるのかもしれない。枕元に置いてあったスマホの時計を見ると、もうお昼だ。今日はバイトは休み。

　俺は、ドキドキしながらも、自然にスマホをタップしていた。
　そう、あの画像を見るために……。

　ピンクグレープフルーツが、怪しげにムニュムニュしながら、回り続けている。まるで生き物のようだ。
　でも、不思議と今日は、気持ち悪さを感じなくなっていた。

「今頃、來(らい)ちゃんも、俺と同じこのヌルヌル画像を見ているんだろうな……」

　昨日見た、來ちゃんのスマホの画面を思い出しながら、そんなことを思わずつぶやく。

　そして、月野美来のつぶやきには、こんな言葉が。

『癒し画像だよ♪　今日もヌルヌル画像の第８弾、みんな見てね♪(*´◡`*)♥』

　相も変わらず、やってやがる。
　その下に書いてあった「ヌルヌル画像集」という言葉に目が留まる。

「んっ？　ヌルヌル画像集？　色々沢山、こういう画像があるっていうことか？」

　その日、俺は知らず知らずのうちに、月野美来のヌルヌル画像集をずっと見ていた。
　いつの間にか、それを求めてしまっている自分がそこにいる。

　そして、遂に「フォロー」という名の禁断のボタンを押してしまった……。