【 9日目:グレープフルーツ星人 】

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【 9日目:グレープフルーツ星人 】

「ふわぁ~」  9日目の朝は、気持ちよく目覚めることができた。  もちろん、いつもの夢は見た。今日は、ピンクグレープフルーツ星人が、俺の体を包み込み、流れるプールのようにして、ムニュムニュとグニュグニュと泳がせた。  今日は、來ちゃんの撮影日。  胸が躍る。ドキドキする。  なぜだ?  俺は大学生で、彼女は高校生。  好きになっても問題はないよな?  ――そんなことを思いながらも、写真スタジオでの撮影が始まる。 『ピピピピ……、パシャ』 「ああ~、いいね~。來ちゃん、かわいいよ。もうちょっと、こうしてみようか?」  來ちゃんは素直に、カメラマンでもある店長の言うことを聞く。  店長と來ちゃんは、もう15年ほどの付き合いだから、息もピッタリだ。  笑うタイミングだったり、ポーズを取るタイミングだったり、次から次へと流れるように、撮影が進んでゆく。  あまりの可愛らしさに、俺は時折、カメラのアシスタントの仕事を忘れるくらいだ。  お昼をちょっと過ぎた頃、撮影が無事終了する。 「來ちゃん、お疲れ様~。今日はこれで終わりね」 「どうもありがとうございました♪」  來ちゃんは、ペコリと頭を下げると、慌てた様子で小走りで鞄のところまで行く。そして、鞄からまたスマホを取り出して、指をササッと上下左右に動かしている。  気になる……。  また、あの月野美来のヌルヌル画像を見ているのだろうか。 (そんなにも、大好きなんだ……)  俺は、思い切って來ちゃんに、声をかけてみた。 「ねぇ、來ちゃん。何、見てるの?」 「えっ? あっ、これを見て」  彼女がスマホを俺に向ける。a7b477c8-0c90-4c9e-978c-c863222d7162  やっぱり、予想通り、月野美来のヌルヌル画像だ。  今日は確か、第9弾のはず。  來ちゃんが、月野美来のヌルヌル画像ファンであれば、俺も昨日、1日その画像を見まくったので、知っているぞ。これは、來ちゃんと話す絶好のチャンスだ。 「あっ、來ちゃんも月野美来のヌルヌル画像ファンなんだね。実は、俺もそうなんだ」  思わずそんな言葉が、口から漏れていた。
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