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【 10日目:チョコレート星人 】
「うぅ~ん」
今日の目覚めはとてもいい。チョコレート星人ととろとろチョコまみれにはなったが、嫌な気分はしない。もはや、悪夢ではなくなって、むしろ心地よく、癒されるほどだった。
そして、今日は來ちゃんのモデル撮影、最後の日。
少し寂しさはあるが、昨日、沢山ヌルヌル画像の話を來ちゃんとできたので、今日も彼女に会うのが楽しみだ。俺の心は、昨日よりもむしろ、ドキドキと胸が高鳴っている。
もう、お分かりだと思うが、この写真館でのバイトを辞められない理由のもう一つは、來ちゃんに会えるからだ。
彼女は、定期的にこの写真スタジオに写真を撮られるためにやってくる。
それが、このバイトを辞められない最大の理由だ。
『ピピピピ……、パシャ』
「ああ~、來ちゃん、いい笑顔だ。もう少しでお昼だから、あと数枚撮ったら終わりにしよう」
終わってしまう。
來ちゃんとの楽しかった日々が。
彼女は、レンズ越しでも、舞台セット裏から見ても輝いている。
子供の頃からモデルをやっているだけあって、どうやったら可愛らしく映るのか、熟知しているようだ。仕草の一つ一つが、絵になる。
「は~い、來ちゃん、撮影お疲れ様~」
「どうもありがとうございました♪」
そう言って頭を下げると、また小走りで鞄の元へ。
鞄からスマホを取り出し、また月野美来のあの画像を楽しみにしている。
何やら嬉しそうな顔をしながら、スマホをいじる來ちゃん。
そうだろうよ。
俺も楽しみだ。
だって、今日は、記念すべき10回目、『第10弾』の日だからだ。
「來ちゃん、第10弾出てる?」
「はい、出てますよ。ほら♪」
彼女は、満面の笑みで俺にスマホの画面を見せてくれた。
それは壮大な空と山と滝の画像だった。
なぜか、その画像にドキドキが止まらない。
とてもこれが、静止画から作られたものだとは思えないほどのクオリティー。
「おお~っ、第10弾にふさわしい画像だね。もう、ここまで来ると動画と変わらない感じもするね」
「うふふっ、そうですね♪」
彼女は、なぜか顔を赤らめ、右手で口元を押さえた。
これは、ひょっとして脈ありか?
そんなことを期待させてくれるような、彼女の仕草だった。
俺の体中の血液は、ドクドクとこの壮大な滝のように、心臓へと流れ込んでくるようだった。
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