【 7日目:バーガー星人 】

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【 7日目:バーガー星人 】

「ぐぅぅ~……」  さすがに7日目の朝は、大きな声も出なくなっていた。  そう、またしても悪夢を見てしまった。ヌルヌルとチーズや肉、野菜さえもとけるバーガー星人に襲われ、無理やり口の中にバーガー星人の頭を押し込まれたのである。お腹が空いているはずなのに、なぜだかお腹がいっぱいだ。  そんな重い足取りで、今日もバイトへ行く。そこに現れた天使。 「おはようございます♪ (あゆむ)さん♪」  弾むような彼女の声が、店内に響いた。 「あっ、お、おはようございます……」  俺は頭の後ろを掻き毟り(かきむしり)ながら、彼女とチラリと目を合わせた。 「歩くん、また明後日から、彼女を撮るから手伝ってくれるかな」 「あっ、はい店長。分かりました」 「歩さん、よろしくお願いします♪」  彼女は、髪を耳にかける仕草をすると、深々と俺に頭を下げた。  店長から聞いた話だと、彼女はまだ高校生とのこと。  小さい時から、モデルをやっていて、俺のバイトしているこの写真館の常連さんらしい。実は、俺がこの写真館のバイトをし始めたのも、彼女の写真がこの写真スタジオに大きくライトアップされていたからで、いわゆる人目惚れしてしまったのだ。  彼女が2、3歳の頃から、小学校、中学校、高校までずっとこの写真スタジオの看板を彩っている。この写真館だけでなく、ホテルや美容院、結婚式場など様々なところでモデルをしているとのこと。  今日は、とある企業のネット広告の写真モデルの打ち合わせで、来ているようだ。 「(らい)ちゃん、今回は先方がこんな感じで行きたいって言ってるんだけど、この衣装と髪形をこうして、これを持って……」  俺は、打ち合わせの内容が全く頭の中に入って来ない。  斜め前に座る來ちゃんのかわいらしい姿が、チラチラして集中できないのだ。  打ち合わせが終わると、丁度、お昼になった。 「どうもありがとうございました♪」 「それじゃあ、明後日よろしくね。來ちゃん」 「はい♪ あの、もうちょっとだけここに座っていてもいいですか?」 「ああ、いいよ。ゆっくりしていて」  すると、來ちゃんが持って来ていた鞄から、自分のスマホを取り出し、何やら指をスラスラと動かしている。  俺は打ち合わせ資料を片付けるフリをして、ドキドキしながら、後ろから來ちゃんのスマホを覗いた。  そのスマホには……。 44e96211-e52e-44eb-ac3a-6e12362c81ac (うわっ! 來ちゃんも、月野美来のヌルヌル画像ファンだったのか……!?)  來ちゃんのスマホからは、ニュルニュルと怪しげに回り続けるタピオカドリンクの様がそこにあった。  今日もあのヌルヌル画像、第7弾が定刻通り、発せられたようだ……。
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