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 役場といえば住民課や福祉課などのイメージだったため、最初は戸惑った。 「お前の席ここな」  新社会人を迎え、右も左も分からない私を、ベテランの井上部長が頬杖をつきながら迎え入れてくれた。  一年前に配属されたこの男は、仕事が全くできないにも関わらず、館長を任されている。年功序列の弊害だ。  当然というべきか、この男、全く頼りにならない。図書の貸出者リストがどこに保存されているかすら分からない始末。一年間なにをしてきたんだ。  前任者が引き継ぎ資料を作成していなかったため、新人にも関わらず自分で調べ、学び、試行錯誤を重ね業務を行う日々。  日によっては深夜まで残業を行うことも。心身ともに疲労は蓄積する。  それでも、覚えてしまえばルーティーン。最初は辛かった事務作業も、一ヶ月後には問題なくこなすようになった。  ただ一つ。お客さんが全く来ない。大きな悩みが残ってしまった。
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