花火の夜に君と

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「けっこう、わかりやすかったと思うんだけど」 「な、何が……!?」 「君が好きだって、言ったよね?」 繰り返される言葉に、絶句してしまう。 この美しい男性は、何を言っているのだろう。 私を好き? そんな馬鹿な、としか思えない。 「なんで、私……?」 「矢島さんは、綺麗だし」 「そんな馬鹿な……!」 「綺麗だよ。あととても可愛い」 そんなこの世の『綺麗』を固めたみたいな顔をしたあなたに言われても! そう叫ばなかったのを褒めてほしい。 どうにも微妙な顔をしてしまったのか、私を見て里野くんは苦笑する。 「うん、まったく伝わってなかったんだなってことはわかったかな」 伝わるも何も、そんな素振りを見せられたことはない。だから彼の言うことはまるっきり、理解できないままだ。 「あのね、これでもわかりやすく君に言い寄っていたんだけど」 「え? いつの話……?」 「いつでも。君に他の男が近づかないようにするくらいには、全力でね」 にっこり笑う里野くんは、とても優しい顔をしている。 はずなのに、どこか黒いオーラが見えるのはどうしてだろう。 そもそも私、里野くん以外の男子とそんなに仲良くなるきっかけも何もなかったし、グループで会話に入ることはあっても個人的に話したりすることなんてなかったような……。
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