花火の夜に君と

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急展開すぎてついていけない。何がどうしてこうなった。 少し前までの私はちょっとは気心知れた? ゼミ仲間? くらいのポジションで満足していたはずなのに。 頭を抱えそうになったところで、ぐっと肩を引き寄せられた。 突然のことに、抵抗もできなかった。 「あんまり離れていかないでほしいな。せっかくこうなれたんだし」 「どう、なったって……?」 恐る恐る、聞いてみる。聞くのが怖い。 里野くんはその美しい微笑みを浮かべたまま、私を甘く見つめて言った。 「恋人でしょう? キスしたんだし」 「……っ!?」 「だからもう、花って呼んでもいいよね?」 何も言えない私と違って、里野くんはどうにもご機嫌だ。 どうしよう、里野くんと密着している左側がじりじりする。 それと、いつの間にか手も、手までも握られているんですけど。わあ、すごく細くて長い指……手も綺麗って素敵過ぎない……? ってそんなことは今どうでも良くて。離れないでって物理的に離れられない感じなんですけどそういう意味で!? ていうかあの、ちょっと、私の方の意思確認とかそういうのはないんですかね!? 「花、好きだよ」 「ひぇ……っ」 「ふふ、可愛い」 みみみ、耳元でそんなこと言わないで! 頭の中ではそう訴えているのに、代わりに出たのはどうにもこうにも弱い叫び……にもならない声だった。 だめだ、完全に里野くんのペースだ。対抗できる気がしない。 ドン ドン ドォン…… 思い出したかのように響く花火の音に反応したら、里野くんは窓の方に目をやった。 「まだ花火やってるね。じゃあもう一回キスしていい?」 「い、因果関係は……?」 「なくてもいいよね? 恋人なんだし」 うっとりしてしまうほど綺麗な笑みを浮かべた『恋人』は、もうキャパオーバーをとっくに飛び越えてオーバーヒート寸前の私に、また柔らかなキスを落とした。 end.
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