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そのころ家では留守番の兄弟もカレーを食べていた。
「そういえばお父ちゃん、最近あんまり家出せんようになったと思わん?」と裕太。
「そやな。まえはしょっちゅう家出しとったな。あ、お前カレー作るのわりとうまいやん」
「うまいやろ?シェフと呼んでくれや。それにしても何で家出なんかしてたんかね」
「それはなー、お父ちゃんの昔の大悲恋が原因らしいで」
「えつ!お父ちゃん、そんな過去があったんか?」
「お父ちゃんが昔働いてたっちゅう、シンバルて音楽やる店があったやろ?もう閉店したらしいけど」
「おう、聞いたことあるな。今やってるライターの仕事もそこの関係の人が繋がってるみたいな…」
「そや、お母ちゃんもそこで歌ってたりしたんやけどな」
「えー、お父ちゃん、二股かけてたんか?」
「ちゃうちゃう。そっちの人が先や。それがな、なんやお父ちゃんがプロポーズした翌日から失踪してしもて、ほんでダムに飛び込んで自殺してしもたんやて」
「げー!そらキツイな。お父ちゃんのプロポーズがよっぽどいややったわけ?」
「いや、そうやのうて、なんやえらい訳アリな娘やったらしいけど」
「なんやよっぽどの訳アリやったんやろな」
「そん時のショックが…フラッシュバックっちゅうのか?時々思い出して苦しゅうなるらしい。そういう時に家出してたらしいわ」
「それ誰に聞いたん?お母ちゃんから?」
「まさか!あのシンバルの社長やってたおっちゃんや」
「はー、お父ちゃんの大悲恋かー」
「おい、カレーお代わり頼むわ」
「そのくらい自分でやれや!」
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