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ここは、『タコ焼き屋』。
その家の中で。
「ご馳走様〜。」
無邪気な声で手を合わせ、貴志が昼食を終えたところだった。
同じちゃぶ台で食事をしていた叶恵が、すぐに言う。
「食べたら自分で、食器を台所に持って行ってよ。」
「は〜い。分かってるよ。」
貴志は言われたままに、食事の済んだ食器を台所へと運んだ。
沢庵を食べながら、叶恵が愚痴を言うかのように壁の掛け時計を見る。
「あ〜、それにしても、お父さんと千恵は遅いよね〜。」
時間は、午後1時を過ぎていた。
その時、つけていたテレビから、流れ続けていたニュースに目を向ける。
「・・・・昨日、◯◯市△△町東の路上で、下校途中の同市立小学1年の女児(6)が、男に切り付けられる殺人未遂事件が起こりました。◯◯県警によりますと、先週月曜日、□□市で起こった通り魔事件と手口が似ている事から、同一犯の犯行の可能性があるとして、捜査をすすめています。捜査関係者によりますと、襲われた女児は腕や脇腹など数ヶ所を刃物のような物で刺されており、意識不明の重体という事です。容疑者は現場から逃走し、今のところ目撃情報もない事から、周辺地域の学校や住民へ注意を呼びかけ、捜査を続けています。」
「えっ〜、コレってそんなに遠くない所で起こってるね。怖いね〜。」
思わず、声を上げる叶恵。
そこで、台所から居間に戻ってきた貴志が言った。
「俺、今日昼食べてから、昌也たちと集まる事になってるから。行ってくるよ。」
「貴志。ニュース見ただろ。気をつけるんだよ。なるべく人が多く集まっている所にいる事だよ。そして、遅くならないように。」
ちゃぶ台の前に座ったまま、叶恵が告げる。
「分かってるよ。遅くならないよ。」
そう言って貴志は、引き戸を開けて靴を履き、店の調理場横を通って外へと出ていった。
叶恵は、冷たい麦茶をクイッと飲む。
そこで、外の方から元気な声が聞こえてきた。
「ただいま〜!」
ガラッと引き戸を開けて現れたのは、ニコニコと笑顔の千恵の姿である。
「あ、千恵。おかえり〜! 遅かったねえ。」
ポロポロと靴を脱ぎ捨てて、千恵が居間の方へと上がった。
そこで修治が同じく、引き戸から顔を出す。
「は〜、ただいま! 疲れた〜。腹も減った〜。」
叶恵は、自分の済んだ食器を台所へ運んで、千恵へと投げかけた。
「千恵。手を洗ってから、ご飯食べなさい。」
「は〜い。」
言われたまま、洗面所へと手を洗いに行く千恵。
二人の昼食の準備をしながら、叶恵が修治へと話しかける。
「二人とも、本当に遅かったわね。もう、どこかで昼ご飯を食べてるのかと思ったわよ。」
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