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修治は軟膏のチューブを手に取り、それを千恵の体の赤い発疹部分へと塗布していった。
その最中も、千恵は体のあちこちにあるアトピーの発疹を手で掻いている。
「痒いだろ。」
修治がポツリと聞いた。
千恵はただ、コクンと頷いただけである。
人は痛みに対しては、ある程度我慢出来るが、痒みに関しては耐えられない、という一般的見解を聞いた事があるが。
修治は、研究所に勤める専門職として、その分野の知識があり、一般の人以上にその事を理解しているのだが、その苦しみが自分の愛娘・千恵に起こっている事に胸を痛めていたのだ。
代われるものなら代わってやりたい。
親なら誰しも思うはずである。
滅多に塗ってあげる事が出来ない軟膏塗りをしながら、修治は小さく呟くように言った。
「心配するな。父さんが必ず、この病気を治す方法を見つけてやるから。」
「本当?」
千恵が、修治を見て聞く。
「本当だよ。父さんは、研究員だから。」
その言葉に、嬉しそうに微笑む千恵。
父と娘しか知らない約束。
小さな居間で、何気なく交わした、永遠の約束なのだ。
それから、一週間後の日曜日。
同じように天候に恵まれ、爽やかな朝日の中、今日も叶恵は店先で元気にタコ焼きを売っていた。
「はい〜。いらっしゃ〜い」
このタコ焼きの商売を、何年も一人でやってきた叶恵は、どれ程忙しくても自分だけでやってきた。
その事実と経験は、誰にも否定出来ない。
汗を流しながら鉄板の上でタコ焼きを焼いていく。
仕事内容は、それだけではない。
普段から材料不足にならないように、予め買い物をしておき、調理しやすいように刻んでおくのだ。
買いに来るお客によっては、タコ焼き一つとは限らない。
一気に何パックも注文を受ける事もあるし、なるべく待たせないように、テキパキと焼き上げる。
もちろん数パックぐらいは、おおよそ予測して作っておき、保温ウォーマーの中に入れてはいるのだが、それでも足らずに、悪戦苦闘する事もあった。
今日のこの日曜日という穏やかに見える日も、朝の開店から、どんどんとタコ焼きを買いに来る客が、後を絶たない。
その忙しさは、有難い感謝でもあるのだ。
叶恵はこれまでに、アルバイト程度でレストランにて勤めた事はあったが、自分の店をだし、何かを販売する事など、初めての挑戦である。
それを、美味しいタコ焼き屋がある、という口コミが少しずつ広がって、今日までに多くのお客が買いに来てくれるようになったのだ。
極力、お客を待たせないように、テキパキと手際良く対応し、タコ焼きを次々と調理していく。
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