5人が本棚に入れています
本棚に追加
すぐに続けて、占い師が問いただした。
「それと、前世を生きる者、って何の事なんだい⁇」
あくまでも冷静を保ったままの様子で、その人物が話す。
「私の名は、セト。この世には、『前世』を覚えている者と、他人の『前世』を見れる者がいる。私は、その両方の能力を持つ者を見つける事が出来るのだ。」
すると、話しの筋がよく理解出来ずに、呆れた顔で返答する占い師。
「・・『前世』? 確かに、そんな話を聞いた事はある。『前世』を覚えている子供たちが、世の中にはいるらしいね。お前は、その、『前世』が見える者を、見つける力があるって? 何のために、そんな力が必要なんだい? ただの自慢かい?」
セトは、そのまま表情を変えずに、言葉を返した。
「『前世』の事を覚えていたり、人の『前世』が見えたりする能力は、一見すると素晴らしいように思える。しかし、『前世』とは過ぎ去った過去でもあり、以前生きていた人生の事をそのままずっと記憶に残しておくのは、今の人生を送っていく上で、悪影響を及ぼす。」
占い師と千恵・銀太は、黙ったまま話を聞いている。
セトの話しが続いた。
「何故、ほとんどの人は『前世』の記憶がないかというと、それはリセット。つまり、今の人生だけを、しっかりと生きていくためだ。」
そう言った後、セトが千恵と銀太を見ながら言う。
「幼い子供が、『前世』での記憶を覚えている。或いは、人の『前世』を見る事が出来る。この両方とも能力は、今を生きていく上で、凄く心のストレスや動揺を生み出し、トラウマのような症状を起こす事も考えられるのだ。」
「まあ、確かにそんな事も起こったりするかもしれないが・・。」
占い師がポツリと言葉を挟んだ。
それに構わず、セトが話しを続ける。
「そこで、我々のような能力を持った者。つまり、『前世』の記憶がある子供や、他人の『前世』を見る事が出来る者を、見つけ出す能力。これは特別に与えられた使命だと捉えて、地域や時には全国を回って、その者たちの能力を無効化するのが役目なのだ。」
そう言われて、占い師が驚いた顔で聞き返した。
「我々のような・・? という事は、アンタみたいな人が他にも存在するって事かい?」
すぐに、セトが返答する。
「その通りだ。霊感がある、という能力と同じで、私のように『前世』の記憶を覚えている者を見つける能力の者は、他にも存在する。普段は普通の人間だから、日常の中に紛れている。」
そこで、ポンと手の平で手を叩いて、占い師は納得した様子を見せた。
「なるほど。要するに、この子たちの『前世』の記憶や力を全て無くしてしまう為に、探しながらここに来たんだね?」
「そういう事だ。」
セトは端的に、返答する。
そこで、黙っていた銀太が、ようやく口を開いた。
「そんな事・・・ダメだよ。まだ、俺の母ちゃんを見つけてないし。」
「そうだよ。あと少しで銀太の、前のお母さんを見つける事が出来るんだから。」
千恵も、一緒に訴える。
あくまでも冷静な表情で、セトが付け加えた。
「こんな子たちが、そんな事を思い出しながら、やっているのか。」
占い師は腕組みしながら、説明する。
「まあ確かにね。私も、そんな事は無理だろうって、この子たちに言ったんだけどね。でも、どうしても母さんを見つけたいって言うもんだから、仕方なく手伝っていたんだけどさ。」
するとセトが、グイッとまた一歩前に出てきて言った。
「そんな事は、今すぐ辞めさせる事だ。現実的ではないし、道理に逆らっている。『前世』は、あくまでも『前世』だ。そして、今は今の人生をきちんと向き合って生きるべきなのだ。」
「まあ、言われてみれば、確かにその通りだよね〜。現実的ではないし、そんな事が出来るかも分からないのに。危険だよね。」
まるで納得して同感のように、占い師も頷きながら言う。
最初のコメントを投稿しよう!