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その頃、駅前の交番へと駆けつけていた叶恵。
交番にいた一人の若い男性警察官に、行方不明になった娘・千恵の事を伝えていた。
「はい。そうなんです。私が、タコ焼きを作っているほんの僅かな時間に、いなくなったんです。」
「そうですか。我々も、娘さんを全力で捜したいと思います。」
30分程、詳しい話をした叶恵は、交番で焦る気持ちを抑えながら、千恵の事を考えて、居ても立っても居られない。
その時、少し慌てた様子で子供の声が聞こえた。
「あの、すいませ〜ん。」
叶恵の対応をしていた若い男性警察官が、それに気が付き、交番の入口へと出てみる。
そこには、4〜5歳ぐらいの男の子と女の子が立っていて、髪や顔は汗まみれの姿で息を荒げていた。
不審に思った警察官が、問いかけてみる。
「どうしたの? 君たち。」
その対応を、椅子に座っていた叶恵が、振り返って見てみた。
なんと、その交番の入口にいたのは、捜していた千恵である。
「ち、千恵〜!」
そう叫んで、思わず飛び付くように千恵の元へと駆け付け、すぐに抱き締める叶恵。
警察官は、よく状況が理解出来ずに質問した。
「え? どういう事ですか? この子たち、知ってるんですか?」
千恵をしっかりと抱きしめたまま、叶恵が一言答える。
「私が捜していた、娘です!」
それを聞いて、警察官は安堵の様子で、やっと微笑みを浮かべた。
「なんだ〜。そうでしたか〜。それなら、良かった。」
その後すぐに、叶恵と千恵は交番から解放され、家路へと向かう。
その後ろを、気まずそうに付いて歩く銀太。
千恵と並んで歩きながら、叶恵は喜びと同時に、心配しすぎた怒りが今になって込み上げてきて、言葉で叱りつけるのだった。
「千恵。捜したのよ。どこに行ってたの?」
千恵も、怒られている事と、心配をかけた事を反省し、申し訳なさそうに訴える。
「・・・ごめんなさい。今日、2回も変な男の人に追いかけられたの。」
「えっ? 本当に? 千恵が一人で勝手に家を出ていくからよ。」
叶恵は驚きながら、また千恵を説教した。
先程の交番では、叶恵たちが立ち去っていって、しばらくした後の事。
交番に一人の若い婦人警官が戻ってきた。
「今、戻ったわ。」
身長は155cm程で、華奢な体型に上下の婦人警官の制服をビシッと着込んだ20歳代の女性である。
そして、色白の肌の小顔とキリッとした眼差しで正義感に溢れていた。
それに対して、交番に残っていた若い男性警察官が迎える。
「お疲れ様です。巡回は変わりなかったですか?」
「そうね。今のところ、平和みたい。」
そう言いながら婦人警官が、ニコリと返した。
男性の警察官が、お茶を汲んでデスクの上に置き、婦人警官に勧める。
「あ、お茶どうぞ。こっちの方は、先程行方不明の幼児の届け出があったんですが、すぐに見つかって無事に解決しました。」
「ありがとう。そうだったの。まあ、良かったわ。」
それを察して、婦人警官がお礼を言った。
「しかし、白凪《しらなぎ》 さんの仕事ぶりと活躍を見ていたら、もうすぐ刑事課に昇格するんじゃないですかね?」
白凪《しらなぎ》 珠里《じゅり》。
24歳。
「それは、上が決める事よ。私はただ、職務を全《まっと》うするだけ。」
「でも、白凪さん。前に話聞きましたが、アレでしょ? お父様との約束みたいなものがあるんですよね。」
「・・・その話は、今はいいわ。過去の話ばかりしても仕方ない。さ、ゆっくりしてないで、次は、あなたが巡回に行ってよ。」
「あ、はい。分かりました。」
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