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 時間は過ぎ、私は風呂から上がって髪を拭きながらリビングに入った。そこにはテレビの前に立つ翔太がいた。テレビはついておらず、よく見ると本読んでいる。珍しい、私が借りてきた本読んでるんだ。  ふと、翔太が私に気づくと、あるページを開いたまま近づいてくる。 「お母さん。今度これ作ってほしい」  そう言って見せてくれたのは中華丼のようなご飯のレシピだった。意外と野菜入ってるし健康に良さそうな感じ。 「意外ね。生姜焼きが好きだから、てっきり似たようなのを選ぶと思ってた」 「いや好きだけど、そう何度も出されたら飽きるって。それにもう甘辛い味で喜ぶほど子どもじゃないし」  翔太の言うとおり生姜焼きは基本焼くだけだから、つい出してばっかりだったかも。でも、子どもじゃない、というほど大人でもないような。  翔太の言い分に苦笑していると、ドアが開く音がした。夫も帰って来るなり、テレビ横の本棚を見る。 「あ、懐かしい。この本、俺も子どもの頃読んでたんだ」  そう言って手に取ったのは魔法使いが主人公の小説だった。 「読んでたの? というかそんな前から会ったの」 「うん、俺が読んでたときと表紙違うけど。というか他にも借りてきているんだね」  夫と翔太は別の本にも触れる。興味を持ってくれて私は笑顔になった。本棚にはこんな効果もあるのね。紹介してくれた図書館の人に感謝しながら、夫と翔太の輪に入る。 「今度、図書館にみんなで行きましょ。好きな本見つかるかもしれないし」 「そうだね、俺もこの本読みたいし」 「その前に部屋を片付けないと。お母さんが借りてきた、この、こと、すて・・・・・・」  翔太が睨みつけるようにタイトルを読む姿に夫婦で微笑んだ。   おわり
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