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 次の日、図書館へ期限の切れた本を返却し、書架をまわっていた。家と職場を忘れられる数少ない場所だ。背表紙を見るだけで好奇心がかき立てられる。 最近は実用書でも気になるようなタイトルが増えてるし、一見難しそうなことでも表やイラストを使ってるから分かりやすいんだよな。  一通り一般書の棚を見終えると、今度は児童書の方へ向かう。児童書の書架は棚が低く、絵本は表紙が見えるように面出しされていた。棚を覗けば、お目当ての本が順番に並んでいる。  この魔法使いのシリーズずっと気になってたんだよね。でも、大人の私が予約するのは忍びなくって。手を伸ばすと、数冊あったうちの一つだけ取った。ホントは全部借りたいけど、読み切れないし。思い浮かんだのは、翔太のあざ笑うような視線。もうちっちゃいときは可愛かったのに、あんなに生意気になって誰に似たのかしら。  やがて、カウンターへ向かい貸出の処理をしてもらう。バーコードリーダーの音が響く中、図書館の人のすぐ隣を見れば蓋のない箱が積み上がっていた。 「気になりますか。ただいま、この『本棚』もお貸し出ししているんですよ」  手続きをしてくれた図書館の人がその一つを手渡してくれた。本棚とは言っていたがダンボールで出来ており、かなり簡易的だ。大きさとしてはA4サイズの絵本くらいなら入りそう。 「こんな感じで使うんですか?」  空いている方を上に借りた本を入れようとすると、図書館の人は首を振る。そして、こうです、と空いてる方を横に向け、本を入れていった。ちょうど5冊でピッタリと収まり、背表紙が見える状態になった。収まるサイズを選んでくれたのか。感心している私に図書館の人が話を続ける。 「これがあれば、立てておけるので読みやすくなるのではないでしょうか?」  確かに。今まで上に積んでしまいがちだったから、いざ読みたくても下の方にあるとその気が失せちゃって。 「そうですね、それじゃ一つ借ります」  私は借りた本を本棚ごと袋に入れて帰宅した。試しにテレビの隣に本棚を置いてみる。すると、これまたピッタリと収まった。無意識にサイズ感を気にして本を選んでいたのかな。まぁ、これなら読みたいとき取りやすいし、目に入るから延滞せずに済みそう。  ホッと安心すると、ついでに買ってきた食材を入れつつ夕飯の支度をし始めた。
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