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「つまり、おそらくは、レンダラー自身にも意思があり、人々からの奉仕なしでも戦いたいと思っていて、そのあと人間達から出た光を浴びて、独自の判断で動き出したのではないかと」
「ええい、そんな事はどうでもいいわい。それより、もっと強い怪獣を作れないんか」
「それより魔王様」
「何じゃい」
「火星に奇妙な物が存在しています」
「だからそれがどうしたっていうんだ」
「いや、見て下さい。レンダラーです」
「何。見せてみろ」
モニターに火星の様子が映し出されている。そしてレンダラーの姿もあった。
「何だかはりつけにされているみたいです。それと、何か文字が書かれている札もあります」
「ううん、余らの見た事がない文字のようだな。どこかの星の文明の文字だろう。これを翻訳してみろ」
しばらくして、魔王の所に家来がやってきた。
「翻訳が完了しました。読み上げます。『この者、掟にそむいたので罰を与える』」
「罰とは何の事だ」
別の家来が説明する。
「おそらくは、レンダラーはレンタルヒーロー。第三者からの奉仕によってのみ活動を行なうべきかと。勝手な判断で行動した場合は母国からの裁きにより罰を与えられる。まああくまでも自分独自の推測に過ぎないですが」
「なるほどそうだろうな。よし、いい事を思いついた。あれをここへ連れてこい」
「え、あのレンダラーをですか」
「そうだ。何をもたもたしておる。早くしろ」
地球から宇宙船が何機か飛び出し、火星にあるはりつけにされているレンダラーを確保し、そして地球に送っていった。
「ようし、ただちに作業に入れ」
「しかし、これは無茶ですよ」
「無茶でも何でもやれ。とある別次元のヒーローは、よその星での活動時間をのばすために、その星の住民と合体してその姿で長期間行動していると聞く。そのいわゆる憑依を今からここでやるのだ。この前戦った怪獣の中に埋め込んだコウタロウとかいう者のボディは、すでに取り出しておる。まだ死んではおらん。そいつとそのレンダラーを合体させて、変身ヒーローのようにするのだ。そして余の力で洗脳させれば、無敵の存在となる。ガハハハハ」
作業は数日間にも及んだ。
「まだか。まだできぬか」
「あと一週間はかかる見込みです」
「遅い。もっと早く作業を急がせろ」
「ですが、しっかりと完成させるにはじっくりと時間をかけた方が」
「ええい。わかった。待っててやるわい」
そして1週間後。
「ようやく完成いたしました」
「おおそうか」
魔王は研究室へと進んでいった。そこには1人の人間が台の上に寝かされていた。
「おお、コウタロウ。こ、これが・・・」
「そうです。巨大化してレンダラーの姿になる能力を有しています」
「おお、よくやった。早速、洗脳を開始する」
その時、遠くで何か大きな音がした。
「何だ、何事だ」
「人間達が攻めてきたようです」
「な、何だと」
見ると、大勢の武装した人達がどっと押し寄せてきた。魔王のいる部屋がその兵士達でいっぱいになった。
「隊長、コウタロウさんを見つけました」
隊員の1人が腕にある通信機で話した。すぐ返事が返ってきた。
「おおそうか、ようし、そいつを連れ出してすぐ脱出しろ。そのあとこの基地を爆破する」
コウタロウは隊員達によってさらわれていった。
「魔王様、大勢の兵が押し寄せてきました。ここは危険です。すぐ脱出して下さい」
「く、おのれおのれ~」
魔王は何人かの家来と共に走り出し、別の部屋へ入っていった。そしてそこにある機械を操作すると、部屋すなわち脱出機は基地から飛び出していった。
隊員達が全員脱出したあと、基地は爆破され破壊された。
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