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「申し訳ございませんでしたッ」
目にも止まらぬ速さで床に頭をこすりつける代田蓮太の勢いに気圧され、樫本桜はその場で固まってしまった。
地べたにひれ伏した代田の後頭部を見つめ、次いで目の前の中年の男に視線を向けると、怒りと訝しみの混ざった何とも複雑な表情でこちらを睨みつけていた。
土下座なんてしたことないし、これから先もすることはないと思っていた。
ちゃんと見ていたわけではないからはっきり覚えてはいないけど、何年か前に流行ったドラマで、主人公が無理やり土下座をさせられていたシーンがあったような気がする。
「ほら、早く頭下げてッ」
這いつくばった姿勢のまま代田は樫本を促す。
こんな仕事だなんて聞いてないけど仕方がない、お金のためだ。劇団の舞台チケットが捌けなくて余りを自腹で購入することになってしまった。とにかく、日給や時給のいい仕事をやらないと。
演技の練習になると腹を括って、樫本は額を床に押しつけた。
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