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レンタル妖怪ショップ
その夜、うらぶれた裏通りの商店街で、僕はその奇妙な店を見つけた……。
僕は夜の散歩を密かな趣味としているのであるが、その夜はあまり足を向けたことのない、その商店街の通りを歩いてみることにしたのだ。
そもそもからして寂れた人気のない商店街であるし、静まり返った深夜の裏通りにはシャッターの壁だけが左右に延々と続き、昭和を感じさせるレトロフューチャーなデザインの街灯達が、煌々と橙色の光を等間隔で暗闇に照射している……。
もちろん僕以外、歩いている者もひとっこひとり見かけないが、だからといって不気味さや恐怖を感じるという雰囲気でもない。
若干汗ばんだ身体に当たる夜風も心地良く、いつもの夜の散歩同様、むしろ爽快な気分だ……それにこうして自分以外、周囲に人間が誰もいないと、なんだかこの世界を支配しているかのような、そんな優越感を感じたりなんかもする。
そう……今、この世界で活動しているのは僕一人だけなのだ。
「……ん?」
と思っていた矢先、僕の視界に一際明るい光が飛び込んできた。
薄暗い夜道に、そこだけどぎつい色を放つ電飾の看板……良くいえば歓楽街っぽい、悪くいけば下卑たその照明に、初め僕は場末のキャバクラか? さもなくば無料風俗案内所かと思った。
だが、背面から電灯で照らされ、ぼんやりと闇に浮かび上がるその看板には──
「レンタル妖怪ショップ」
と、劇画調とでもいうんだろうか? 昔の映画ポスターに使われていそうなフォントでデカデカと記されている。
「レンタル妖怪……妖怪のレンタル?」
なんだ? 妖怪のレンタルって……さすがに本物をレンタルしてるわけないだろうし、妖怪系の着ぐるみとか小道具とか、そういった映画やドラマ撮影用品を貸し出してる店だろうか? そういう店、家賃の安いうらぶれた裏通りとかにありそうだしな……。
ともかくも、興味を惹かれた僕はちょっと覗いてみることにした。
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