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「そっか。良かったよ」
僕は心の底から安堵した。
死んですぐに、僕は叔父さんの家の前にいた。それはきっと、事故にあって死ぬ間際に浮かんだのが、叔父さんの事だったからかもしれない。
いくら両親が行くなと言っても、僕の意思さえ固ければいつでも来られたはずだ。それでも足を向けなかったことに、僕はずっと後ろめたさを感じていたのかもしれない。
隔離された二人だけの世界を前に、僕にはどうすることも出来なかったからだ。
だけど実際に叔父さんと向き合ってみて、それが杞憂に終わっていたことを知った。ならば、僕の役目はここまでだ。
「そろそろ行くよ」
僕は玄関へと向かう。
目の前で消えるのは、何だかこの最後には相応しくない。
「……ああ、気をつけて」
一瞬、複雑な表情を浮かべたものの、叔父さんはすぐに優しい顔になる。
玄関から出ると、辺りはすっかり薄闇に閉ざされていた。
「元気でね」
「ああ」
最後の挨拶を済ませると、僕は叔父さんに背を向ける。
僕がこれからどこに向かい、どうなってしまうのかは分からない。だけど悔いはなかった。
僕は叔父さんの視線が闇に溶け込むまで歩き続けていた。
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