叔父の家

1/6
前へ
/6ページ
次へ
 落ち着かない気持ちを持て余し、今でも緊張するのだと僕は知った。  叔父さんの住む日本家屋を前に、僕は今この瞬間も迷いを拭えずにいた。ここに来たのは、もう五年も前になる。今さら、どんな顔をして会えば良いのか分からなかった。  建物自体は五年前と大して変わらない。懐かしい日本家屋のままだった。  ただ、置かれた植木鉢の花は枯れ、どんな植物が植えられてきたのか分からなくなっている。植木は手入れがされていないようで、枝葉が乱れていた。  叔父さんの精神状態が現れているようで、僕の中で不安が込み上げてくる。気付けばチャイムも鳴らさずに、玄関の扉を開けていた。  ガラガラと音を立てると、シーンと静まり返った廊下が目に入る。  声をかけようか迷っているうちに、人の動く気配が奥からして、しばらくすると叔父さんが姿を現す。  四十半ばにしては、随分老け込んで見えるやつれた顔。くたびれたシャツに黒のスラックスが、疲れ果てた中年のように見える。初めは本当に自分の叔父なのか、それすら疑うような光景だった。  叔父さんは僕を一目見ると、目を見開いた。 「一樹(かずき)なのか?」  僕が頷くと、動揺を隠せない様子で叔父さんが足早に向かってくる。 「……上がりなさい」  やや戸惑いながらも、叔父さんは僕を迎え入れてくれる。拒絶されなかったことにホッとしながら、僕は框を上がった。  それから叔父さんに案内されて、懐かしい居間に連れられる。 「何か飲むか?」 「大丈夫」  決まり悪そうにする叔父さんから視線を逸らし、部屋の中を見渡した。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加