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「ここに……いようか?」
時間が止まったように、辺りが静まり返る。叔父さんが何かを言い出す前に、「叔母さんの代わりとまではいかないだろうけど」と付け足す。
僕がここにいることで、少なくとも孤独ではなくなるはずだ。この時が止まったような部屋が少しだけ、動き出すかもしれなかった。
「駄目だ」
さっきまで悄然としていたのが嘘のように、叔父さんはきっぱりとした口調で言った。考える様子もないまま、拒絶を示していることに、僕はショックで固まった。
叔父さんがシンクから離れ、僕の前まで来る。痩けた頬を歪ませて、真っ直ぐ僕を見た。
「俺は……二度もお前を失いたくないんだ」
叔父さんの悲痛な声に、僕は「……気付いてたんだ」と思わず零していた。
両親とは、完全に連絡を絶っていたと思っていた。何とかなると思っていただけに、僕の中で失望は大きい。
「ごめんな……死んでまで、心配掛けて」
叔父さんが僕の肩に触れようとする。だけど、その手は通り抜けて空を掴んだ。
「恭香が死んだ後、確かに俺は絶望したし、恭香に会いたいと願った。実際に恭香は帰ってきた。嬉しかったのは確かで、幸せだったのも否定しない」
浮いたままになっていた叔父さんの手が、ゆっくりと下ろされる。
「だけどな。夢と一緒なんだ。触れられない」
叔父さんがもう一度、僕の肩に手を伸ばす。その手が触れているはずなのに、僕に感覚もなければ、その指は何も掴むことはない。
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