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落ち着かない気持ちを持て余し、今でも緊張するのだと僕は知った。
叔父さんの住む日本家屋を前に、僕は今この瞬間も迷いを拭えずにいた。ここに来たのは、もう五年も前になる。今さら、どんな顔をして会えば良いのか分からなかった。
建物自体は五年前と大して変わらない。懐かしい日本家屋のままだった。
ただ、置かれた植木鉢の花は枯れ、どんな植物が植えられてきたのか分からなくなっている。植木は手入れがされていないようで、枝葉が乱れていた。
叔父さんの精神状態が現れているようで、僕の中で不安が込み上げてくる。気付けばチャイムも鳴らさずに、玄関の扉を開けていた。
ガラガラと音を立てると、シーンと静まり返った廊下が目に入る。
声をかけようか迷っているうちに、人の動く気配が奥からして、しばらくすると叔父さんが姿を現す。
四十半ばにしては、随分老け込んで見えるやつれた顔。くたびれたシャツに黒のスラックスが、疲れ果てた中年のように見える。初めは本当に自分の叔父なのか、それすら疑うような光景だった。
叔父さんは僕を一目見ると、目を見開いた。
「一樹なのか?」
僕が頷くと、動揺を隠せない様子で叔父さんが足早に向かってくる。
「……上がりなさい」
やや戸惑いながらも、叔父さんは僕を迎え入れてくれる。拒絶されなかったことにホッとしながら、僕は框を上がった。
それから叔父さんに案内されて、懐かしい居間に連れられる。
「何か飲むか?」
「大丈夫」
決まり悪そうにする叔父さんから視線を逸らし、部屋の中を見渡した。
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