21.私の選ぶ道は2(篠原花菜)

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21.私の選ぶ道は2(篠原花菜)

 ボサボサの髪を軽く整えた花菜は、自分が少しくたびれた部屋着を着ている事に気がついた。 「さすがにこの服はまずいかな…」  いくら爽太が友達とはいえ、あまり変な格好は見られたくない。  しかし、だからといってわざわざ着替えましたという服をえらぶのも何か違う気がすると、花菜は頭を悩ませた。 (はあ、今日はもう何もしたくなかったのに…)  そんな事を考えているうちに、爽太の到着を知らせるチャイムがなった。 「あ、来ちゃった!」  花菜はあわてて簡素なワンピースに着替えた。そして、インターフォンの画面で爽太の姿を確認すると、玄関に向かった。 「いらっしゃい」  花菜が、ドアを開けると両手に袋を持った爽太が立っていた。 「いっぱい買ってきた。後、酒も」 「ありがとう」  花菜は、爽太を中に案内すると、自分はキッチンにお皿とグラスを取りにいった。花菜が、用意して戻ると、テーブルにはたくさんの料理が並んでいた。   「ちょっと買いすぎじゃない?」 「まあ、いいじゃん。それより、早く食べよう。俺、もうお腹空いて死にそう」 「分かったよ」  花菜は、苦笑いしながらうなずいた。  グラスにお酒を入れると二人は、とりあえず乾杯した。爽太は、グイっとお酒を飲んだ。 「あー、おいしい」 「仕事お疲れ様」 「花菜はどうだった?休みはゆっくり出来た?」 「うーん、まあまあかな」 「本当に具合悪いわけじゃないんだよな?」 「大丈夫。具合は悪くないよ」  花菜はごまかすように食事に手をつけた。 「そっか…」  そういうと、爽太は花菜の頭を撫でた。 「ちょっと」  突然の事に花菜は驚いて、爽太の手から逃げた。 「それにしても腫れてるな」  爽太は、まぶたを指しながら笑った。    今さらながら、恥ずかしくなった花菜は顔を背けた。 「ちょっと、あんまり見ないでよ」 「何で?見に来るって電話でも言ったじゃん」 「いいって言ってないのに、勝手にきたんでしょ」 「そうだっけ?」  花菜は、爽太を睨むとお酒をぐいっと飲んだ。すると、そんな花菜の姿を爽太は、おかしそうにわらった。 「なあ、花菜」 「何?」 「今限定でさ、花菜は雨女じゃなくて、まぶたが腫れたハレ女だな」 「はあ、オヤジギャグ?」 「いいじゃん、ハレ女」  そんなくだらない話ばかりをして、二人だけの食事会は進んでいった。  お酒もいい感じに進んだ頃、爽太は花菜を見て嬉しそうに笑った。 「どうしたの?」 「やっと、いつもの花菜に戻ったなと思ってさ」  爽太に言われて、花菜はやっと気がついた。爽太が来るまでは、食事をする気持ちにもなれずあんなに気持ちが暗く落ちていたのに、今は楽しく食事が出来ていた。  それも、爽太のおかげだろう。  それに、今日は爽太は、修哉に関して花菜に何も聞いてこなかった。その事も今の花菜にはありがたかった。 「ありが…」  花菜が爽太にお礼を言おうとした時、爽太が花菜をじっと見ている事に気がついた。 「どうしたの?」  すると、爽太は花菜の顔に手を伸ばした。 「大丈夫だよ」 「え?」 「目が腫れてても可愛いよ」  爽太の言葉に花菜は驚き、そして顔を赤らめた。 「爽太、ちょっと酔いすぎじゃない?」 「そうかな?じゃあ、そろそろ帰ろうかな…」  そういうと、爽太はゆっくりと立ち上がった。 「え?もう帰るの?」 「そろそろ帰らないと、酔いすぎて本当に帰れなくなりそうだし」 「そっか…」  花菜も、立ち上がると寂しそうに呟いた。 「そんな悲しそうな顔するなよ。帰れなくなるだろう」 「そんな顔してた?」 「してた」  爽太は、ため息をつくと花菜の頭をポンポンした。 「爽太、どうしたの?今日、少しおかしいよ」 「花菜の今の寂しい気持ちは友達に対してだよな?」 「えっ…、それは…」 「分かってる。花菜がまだ、結論を出してないのも知ってるし、どんな結論になってもいつまでも待ってるつもりだった。でも、やっぱり俺は花菜の隣にいたいんだ」 「爽太…」 「だから、これからは花菜に俺を選んで貰えるように頑張るから」  花菜は、どう返していいか分からず、黙ってしまった。 「そんな顔するなよ。俺が勝手にやるだけだから。さあ、本当に帰るから。じゃあな」 「うん…。今日は、ありがとう」 「またな」  花菜は爽太を送り出し、リビングに戻るとソファーにドサッと座った。 (いつまでも逃げてはいられない。ちゃんと考えなきゃ)  それから、爽太は休みのたびに花菜を誘った。  爽太からのお誘いは、今までの気軽なランチとは違い、水族館や映画館、遊園地など明らかにデートみたいな場所ばかりだったので、最初は戸惑っていた花菜だったが、爽太とのお出かけは毎回楽しくて、気がつけば純粋にその時間を楽しんでいた。  二人の雰囲気は、甘い雰囲気とはまだほど遠かったが、もしかしたらそれは花菜が気後れしないようにと爽太なりの気遣いなのかも知れないと花菜は感じていた。  だからこそ、これからの事を考えるためにも、花菜は今やるべき事をする事にした。
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