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クラレンスは土の中
弟に対してこういう言い方をするのも何だが。俺の弟の忍は“いいやつ”である。小さな頃からその評価は変わっていない。
『え、兄ちゃんまた消しゴムなくなっちゃったの!?』
小さな頃から、俺はしょっちゅうものを忘れたりなくしたりしてしまううっかり屋だった。それで俺が困っていると、弟はすぐに自分の筆箱から消しゴムを出してきて“はい”と渡してくれるのである。
『はい、僕のあげる!兄ちゃん、一個しかないから大事に使ってよね!』
『え、いいのか?お前が困るだろ』
『消しゴムくっついてる鉛筆持ってるからなんとかなるよ。大丈夫!』
まあこんな具合である。おやつをくれるのは当たり前、玩具を貸してくれるのも当たり前。もちろん、優しさというのは物の貸し借りだけで示されるものではないが、昔から弟は俺のことが大好きだったしとても親切だった。そして、俺のこととなると非常に勇敢だった。俺も弟も体が小さくていじめられることが少なくなかったのだが、弟は俺がいじめられているとどこからともなく現れて、体のでっかいいじめっ子に頭突きをぶちかましていくのである。
『兄ちゃんをいじめるなああ!僕がぶっとばしてやるぞ!!』
こんな具合である。
弟も小さくて力は弱いのに、俺のこととなるといつも一生懸命になってくれた。だから俺にとっても弟はとても大切な存在で、高校生になった今に至ってもものすごい仲の良い兄弟で通っている。
「兄ちゃん、困ったことがあったら僕に何でも相談してよ。できることはなんでもするからさ」
あれから俺の方はにょきにょきと背も伸びて、高校ではバレーボールをやっていることもあり弟よりずっとムキムキになったというのに。弟は今でも、俺のヒーローのつもりでいるようだった。
ちょっとだけ恥ずかしいけれど、俺もそんな弟を誇らしく思っていたのである。
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