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身長およそ二十四センチメートル、樹脂とソフトビニルの身体をもつ「ほんものの女の子」。それが私たちの愛してやまない〝ルヴィ・ドール〟だ。
二十年ほど前に日本の玩具メーカーから売り出された、いわゆる着せ替え人形である。
二次元的な魅力を追求するのではなく、人間の顔に近づけられたフェイス。衣類もリアル路線で、プリンセスのようなドレスなどは、公式ではほとんど作られていない。
女児向け玩具ながら、他ブランドと明確に差別化された「大人向け」戦略がヒットし、現在では世界的に人気を確立しつつあるドールだ。「ほんものの女の子」とはメーカーが打ち出したキャッチコピーで、発売以来ずっと貫かれているコンセプトでもある。
私は六年ほど前にその魅力に取り憑かれた。
玩具屋の店頭で偶然目にした〝ルヴィ〟に心を奪われ、運命じみたものを感じて購入……というベタな経緯で、この「沼」に足を踏み入れたのだ。
今では五十体ほどの〝ルヴィ〟を所有している。コレクタータイプの愛好家もいるが、私はコレクションではなく「カスタム」に楽しみを見出すタイプだ。
フェイスやヘアを彩色し直したり、ボディパーツを付け替えたりといった、ドールの本体に手を加える行為を総括してカスタムと呼ぶ。
私は中古の〝ルヴィ〟を手に入れてはカスタムを施すようになった。ちょっとした加工で、世界に一体しかないオリジナルの〝ルヴィ〟が出来上がる。それが楽しいのだ。
専用のSNSアカウントを作り、カスタムしたドールや手作りの衣装の写真をアップする。そうして楽しんでいた中で、私はすずちゃんと出会ったのだった。
実際に会ったことはないが、音声通話は何度か交わした。彼女は二十歳と聞いており、今年で三十五歳になる私とはずいぶん年齢差があるのだが、なんだか妙に気が合った。
そう、二十歳だったはずだ、彼女は。
「すずちゃんは、なぜ亡くなったんですか」
この上なくプライベートでデリケートな質問だとわかっていながらも、私はリョウという少年に尋ねずにはいられなかった。
それほどの若さでこの世を去るとすれば、原因は事故か病気か。勝手に予測をつけながらも発した問いに、しかし、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「父に殺されました」
リョウは無表情に言った。
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