カスタムドールクローゼット

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 一人暮らしの部屋に帰れば、カスタム済みの〝ルヴィ〟たちが出迎えてくれる。  どれも世界にひとつだけの人形だ。ほとんどが私の手作りの洋服を纏っている。私だけの幸せな国のような1LDK。  作業台に寝かせていた「蜜」は、顔も髪もなくなってしまったものの、クリーニングの甲斐あって、ソフビの肌を陶器のように輝かせていた。ありあわせの白いドレスを着せ、並んだドールたちのあいだに座らせてやる。  早く顔を描いてやりたいが、フェイスペイントはドールの命だ。休日に万全のコンディションで施してやりたい。  「蜜」本体に手をつける代わりに、リョウから預かった黒いワンピースを取り出した。  なんの装飾もないシンプルなもの。結構よれていて毛玉も見られる。タグを確認すると素材はポリエステルだった。  写真の中のすずちゃんは、黒地に白いレースがあしらわれたブラウスを身につけている。このブラウスに、丸く広がるシルエットのスカートを合わせよう。私はそう考えていた。
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