真実

1/2
前へ
/17ページ
次へ

真実

「ごめん‥‥‥」 玄関に立ち、深く頭を下げる。 空気がしん、と(しず)まった。 「英美里(えみり)、何度も電話くれたよね。その間、あなた一度も私に文句言わなかった」 「お姉ちゃん‥‥‥」 「あなたは憶えてもいないのに。父さんも母さんも、簡単には引っ越せないって分かってて私」 三人が再びここで心穏やかに暮らせるまで、どのくらいの月日がかかったのだろう。 それでもみんなは、ただ会いたいとだけ言ってくれて。 それでも私は、あの時チロと居られなかったことがどうしても許せなくて。 そうしているうちに一度閉じ(こも)ってしまった私の(から)は、更に硬くなって厚くなって。 いつかその気になったらやろう。 帰る時期(チャンス)(いっ)した私は自分にそう言い聞かせ、 この関係をいつまでも引っ張って逃げていたんだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加