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真実
「ごめん‥‥‥」
玄関に立ち、深く頭を下げる。
空気がしん、と鎮まった。
「英美里、何度も電話くれたよね。その間、あなた一度も私に文句言わなかった」
「お姉ちゃん‥‥‥」
「あなたは憶えてもいないのに。父さんも母さんも、簡単には引っ越せないって分かってて私」
三人が再びここで心穏やかに暮らせるまで、どのくらいの月日がかかったのだろう。
それでもみんなは、ただ会いたいとだけ言ってくれて。
それでも私は、あの時チロと居られなかったことがどうしても許せなくて。
そうしているうちに一度閉じ籠ってしまった私の殻は、更に硬くなって厚くなって。
いつかその気になったら赦してやろう。
帰る時期を逸した私は自分にそう言い聞かせ、
この関係をいつまでも引っ張って逃げていたんだ。
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