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「私ね、お姉ちゃんが優しかったの、ちゃんと憶えてるよ」
英美里が私の背中を押して上がり框に導く。
四人で一緒に座った。
「私が泣いたらすぐに来てくれて頭撫でてくれたでしょう? あれ、お姉ちゃんだよね?」
「子供ってね、けっこう赤ちゃんの時のことを憶えてたりするものなのよ」
「そうだな。私も驚いた」
「あとね、もうちょっと大きくなった時だと思うけど、自分のおやつ、割って分けてくれたりしたよね。お煎餅だったのかビスケットだったのかは忘れちゃったのに、そういうことは憶えてるんだよ」
「えみ‥‥‥」
「そう! そう呼んでた。だからね? 私聞いたんだ。あのお姉ちゃんがなんで違う人みたいになっちゃったのか」
「私達も悩んでいたの。最初はなんですぐに謝らなかったんだろうって。少し過ぎて、今度はいつ謝ったらいいんだろうって。そうしてるうちに、謝って済むことなのかも分からなくなってしまって」
「でね? 私ね」
英美里の声が少し揺れた。
「アイス断ちした」
「……今まで、ずっと?」
「うん。そうしたらお姉ちゃん帰ってきてくれるかなって」
抱きしめられた。
「すごいよね。ご利益、あった」
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