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 一気に駆け抜けようとした瞬間の轟音(ごうおん)。 耳を塞いで飛びのいたら、泥濘(ぬかるみ)に足を取られてしまった。 「た‥‥‥」 膝を嫌というほど強打する。 「やば‥‥‥」 定額電灯が点滅する中、私はそばの壁に手を伸ばす。 ――いち、にの 悲鳴を上げて尻餅をついた。 このまま迷っていても、落雷か肺炎が死因になる。 行くしかないよね。 (うめ)きながらうつ伏せになった。 B級映画なら、私は最初に殺されるモブだろう。 這いずりながらシャッターの内側に入り込み、今更タクシーに一縷の望みをかけて、ポケットに手を入れる。 「ちょっ」 首だけ出して外を見回すが、携帯らしきものは無い。 「うそ……」 がっくりと落とした肩を背後から掴まれた。
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