童話

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童話

…… 温風 だ あったかい! 私はゆっくりと目を開けた。 車の中? なつかしい振動音(おと)。 というか、おそらくがおんなじ。 父と母と私と妹と、 そして、大好きなチロとみんなで出かけた(うち)の車と。 ガラガラとシャッターの閉まる音がして、「時計屋さん」が乗り込んできた。 「毛布があったぞ」 受け取ろうと起き上がり 「えっ」 愕然として胸を(かく)した。 「私がやるわね」 後ろから静かな声がして、バスタオルの上から素早く毛布を巻いてくれる。 きっと奥さんだ。 時計屋さんと同じ薄茶の目をした、童話に出てきそうなおばあさんだった。 「寒かったわね。もう大丈夫よ」 時計屋さんは頭を拭いたタオルを助手席にかけると、車のドアをロックした。 ハンドルに手をかけエンジンが温まるのを待っている。 コポコポと何かを注ぐ音が聞こえ、私にかけないよう気遣いながら、奥さんが湯気の立つカップを差し出してきた。 「熱いから気をつけてね」 毛布を羽織り直し、私はお茶を受け取った。
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