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しかし、私はコーヒーが飲めない。
私はスタバの店員だ。
去年の夏にバイトで採用されて、そろそろ1年が経つ。
手先の器用さを買われた私は、バイトであるにもかかわらず、週5で裏方の仕事を任されるまでになっていた。
元々人と関わるのが苦手な私にとって、裏方の仕事は最適と言える。
ホイップを形よく乗せるにも、キャラメルソースをオシャンティーにかけるにも、その作業には人と関わる瞬間がない。
時々ちらりとレジの方を見てみるが、愛想笑いをしたりだの、お金の受け渡しのたびに丁寧な言葉を使ったりだの、スコーンを皿に乗せる時の丁寧な動作だの。とても私にはできないことばかりをこなしている。
そもそも、物事には適材適所というものがある。
私のように暗くて地味で、しかし手先だけは器用な人間は、ああいう表舞台を夢見るだけ辛くなるだけだ。
私は、愛想笑いをするのも気を遣うのも、もう疲れた。
こうやって、言葉も発さないクリームと向き合っている方が性に合っている。
ところで、私はコーヒーが飲めない。
スタバに勤めている身でありながら、私はカフェインを摂ると自律神経が狂ってしまう体質なのだ。
だから、スタバに勤めている身でありながら、1人席でシルバーのノートパソコンとにらめっこしながらコーヒーをがぶ飲みしている男性を見ると、こっちが吐き気してくるぐらいである。
私は時々ぼーっと考える。
もちろん仕事中にぼーっとしている暇はないから、大抵、家に帰ってコンビニ弁当を食べながら考えるのだが。
「もしや、私はこのままスタバに就職するのだろうか?」
コーヒーも飲めないのに?
[しかし、私はコーヒーが飲めない。]
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