1 Rinko side

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等間隔に並べられた背の高い棚をすり抜け、操作機の前に立つ。 デジタル画面に映されていたのは『冷房 29度』の文字。 「あれ、冷房だ。29度ってこんなに暑かったっけ?」 不思議に思いながらも、出るときに戻せば良いか…と25度に下げ、風量を強風にしてやった。 エアコンの風が直接当たる位置に立つと、機械特有のキンキンに冷えた風が頬を強く撫でた。 「うわあ〜気持ち良いなあ〜。ハッ…これってバレたら誰かに怒られるやつかな…」 謎の背徳感を感じたのも束の間、見つかったら怒られてしまうかもと我に返ったが、汗が滲んだ額に当たる冷風があまりにも気持ちよくて目を閉じる。 その瞬間、地面が急にぐにゃりと形を無くしたように揺らぎ、突如として立っていることが出来なくなった。 その事を認識した時には、私の視界は広い床と高く聳える棚で支配されていた。 その景色を最後に、視界はどんどんとどこかへ吸い込まれていき、グラッという頭が揺れた様な感覚に襲われて意識が途絶えた。
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