2 Syun side

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2 Syun side

「4月15日、就任式をしようか」 重厚感のある深い茶色のデスク。 いかにもな椅子に座り、両手で頬杖をつきながらそう言ったのは AOIコーポレーション 代表取締役社長 蒼井 陽(アオイ ヨウ) 蒼井家の長男であり、俺の兄だ。 現在39歳にして父から譲り受けた会社の社長として、多くの従業員を抱えている。 陽が社長として就任してから約3年。 代表取締役専務としてこの会社で働く俺を、副社長にしたいと言い出した。 「40手前になってそのぶりっ子やめてくれ」 「だってさ〜、可愛くお願いしないと春ちゃん聞いてくれないじゃない?」 「俺ももう33だぞ?いつまでもちゃん付けするのもやめてくれ。頭が痛くなる」 蒼井 春(アオイ シュン)。 蒼井家の三男として生まれ、大学卒業と共に親父の経営するこの会社に入社した。 入社当初は総務部に入り、その後営業部・経理部・マーケティング部とこの会社の全ての部署に属して業務の関連性や内容を勉強して回った。 「大体、株主総会で決まったはいいが…お前今日が何日か知ってるか?4月7日だぞ?あと1週間ちょっとしかないのに就任式の準備をさせるつもりか?」 「え〜、だってその日ちょうど春の誕生日だし。いい感じじゃない?」 「全然いい感じじゃないだろ」 こんなふざけたやつが社長だなんて、従業員が知ったら辞めてくぞ。 「まぁまぁ、春が心配しなくとも既に会場も押さえて総務部にも協力してもらって進めてるところだからさ」 「なぜ俺の就任式の日程を俺が知らないんだよ。事後報告も大概にしろ」 「ほら、あれだよあれ。なんだけ…あ、サプラ〜イズ!」 怒りで左の頬をひくつかせる。 いい加減なくせにやる事はやるからあまり強くも言えず。 これが長男の処世術というものなのか? 末っ子として散々兄貴達には振り回されてきたが、30歳を超えても尚振り回されるとは。
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