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諦めていくらでも濡れてやる!と、激しく雨が降る中敢えて普通に歩いて駅まで向かい家に帰った。
その次の日。
全身が重だるく起きるのも苦労した。
熱を計って見たものの平熱。
昨日の今日で疲れが取れなかったのかな、と滋養強壮のサプリメントを朝食に家を出た。
スーツやオフィスカジュアルな服装を身に纏った会社勤めの皆に紛れて出社し、セキュリティーカードをゲートにかざしてビルの中に入るとエレベーター前で沙紀と一緒になった。
「ちゃんと別れられたんでしょうね?」
「うん、別れられたよ。それはもう散々だったけど…」
「よし、またお昼休憩の時にゆっくり話聞くわ」
「是非お願いします…」
ポーン、と音がするとエレベーターの扉が開き自分の部署のある階まで上がった。
その後はいつも通りなんでも屋さんとして総務を全うし、営業部で働く弘也が総務部に来たらどうしようか…なんて考えていたらいつの間にかお昼休憩の時間になっていた。
今日も今日とて社内食堂で沙紀と二人で日替わりランチを食べながら、昨日のレストランでの事を話した。
「もうほんとにさ…腑が煮え繰り返って仕方ないんだけど?え?何様なのあいつは。舐めてるよね?本気で営業部乗り込んでもいいか?」
「流石に面食らったというかなんというか…人にあそこまで言われるとは正直思ってなかったよ」
「こんな美人な彼女裏切っておいてよくそんな事言えたもんだな。本当に人か?人なのか?あぁ〜もうほんと腹立つ!」
沙紀は、瞬きの度に長いまつ毛をパタパタとさせながら怒りを露わにしていた。
「私の事なのに沙紀までイラつかせちゃって本当にごめんね…怒ってくれてありがとう」
「大事な友達をここまで傷つけられて怒らない奴いないっつーの!」
元ギャルの沙紀は、とても姉御肌で友達思いな女性だ。
地元の友達に何かあると、ちょっと会ってくるわ!と定時きっちりに退勤すると颯爽と会社を飛び出していく。
今となっては見た目は落ち着いてギャルっぽさは薄れたけど、何故総務部で裏方仕事をしているのか不思議なぐらいモデルの様に綺麗な容姿。
同じ部署の後輩達からは頼りにされていてとても人気者の彼女は、高校生の頃から付き合って結婚した旦那さんがいる。
「最近私の話ばっかだったけど、沙紀の方はどう?この間結婚記念日だったよね?」
入社3年目の時に結婚し、ついこの間結婚2年目を迎えた沙紀。
ちょうど休みが重なった事もあり、高級レストランの予約をしたと話していたのだ。
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