1 Rinko side

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「そういえば話してたっけ。この間の休みの時に行ってきたよ〜。二人で出かけるの久々だったから楽しかったよ!ディナーも美味しかったし、最後サプライズで結婚記念日のアニバーサリーケーキが出てきて〜」 沙紀はいつも、旦那さんの話をする時はすごく楽しそうに話している。 聞いているこっちまで幸せな気持ちになれる。 「沙紀の結婚式本当に素敵だったなぁ〜。沙紀も旦那さんもスタイル抜群でドレスとタキシードすっごく似合ってたし」 「私はあげなくても良いって言ったんだけどね、旦那が人生に1回しかないんだからやった方が良いよ!って。後から聞いたらどうしても私のドレス姿が見たかったから必死だったって」 「沙紀が旦那さんの話すると私まで幸せな気持ちになるよ」 「もう10年一緒にいるけど、旦那が今の旦那でよかったと思うよ」 「沙紀のこと扱える男性他にいないしね〜」 「それだけは間違いないね!」 沙紀は、弘也のことはどっかで会った時には容赦しない!と宣言してお昼休みを終えた。 その後も定時まで業務を淡々とこなした。 あと10分で今日が終わると言ったところで声をかけられた。 「高橋さーん、本当申し訳ないんだけど備品庫の在庫確認がまだ終わってなくて…私、明日の全体会議の準備しなくちゃいけないのよ。半分ぐらい残ってるんだけどお願いできるかしら?」 この方は、総務部の名物社員。 通称『定時クラッシャー』の山城(ヤマシロ)さんだ。 定時前になると、まぁまぁな残務を抱えてやってきては仕事を振ってくる勤続15年のお局的存在の女性社員である。 他の女子社員がトイレであだ名をつけているのを聞いてしまった時から、山城さんがくる度に『定時クラッシャー』と言う文字が頭を過ってしまう。 「はい、かしこまりました。それでは備品庫に行ってまいります」 私が断ることが苦手なのを知ってか知らずか、高頻度で私のところへ来る。 もう良い加減に慣れたもので、笑顔で引き受けて残業に邁進するのだ。
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