水の琴

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 大会当日、スタート十秒前のアナウンス。鼓動とともに静寂のカウントダウンが始まる。スタートの号砲。拍手とともにランナーが走り出す。港の船の汽笛が背中を押す。  今年からコース変更があり、森の木立で十キロの標識を見た。水琴の調べが聞こえない。少し走ると例の野原が見える。見覚えのある郵便局。やはり水琴の調べは聞こえない。ロスト水琴窟。何とも言えない喪失感。ゴールまで、あと九十キロ近くあるというのに。  今年も四年前と同じ五十九キロ地点で関門時刻をオーバーしてしまい、完走できなかった。  三年ぶりに再会できた人もいれば、会えなかった人もいる。また来年と練習に励むのであった。
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