水の琴

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 六月になり、隠岐の島ウルトラマラソンの季節になった。  彼は久しぶりに隠岐の島で前泊した。  金曜日に現地入りし、空港で昼食後、ホテルまで散歩。  飛行機ではマスクを着用していない客室乗務員も見受けられ、笑顔での接客が嬉しかった。  夜は居酒屋で再会を懐かしんだ。  土曜日は酔い覚ましを兼ねて二十キロ散歩した。水琴窟(すいきんくつ)の跡地で風にそよぐ草を眺めた。暑さにこまめな水分補給をした。  日曜日の早朝五時に隠岐の島ウルトラマラソンがスタートした。  去年は四十八キロ地点で転倒したこともあり、焦らないよう心掛けた。  折りからの雨は恵みの雨になった。  四十五キロ地点になって、「より美しく表現できないか」という自らへの問いかけを繰り返すようになった。自然と笑顔になった。  四十八・四キロ地点の第二関門をクリアし、レストステーションで食事後、再開したが第三関門には間に合いそうもない。沿道の声援に応えながら、「より美しく表現できないか」と自らに問いかける。  やはり第三関門に間に合わなかったが、今後の練習に大いなるヒントをもらった。  ゆっくり高みを目指していくようである。
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