不器用な恋人たち

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 二ヵ月間一緒にいるが、この人のことはまだよくわからない。ただ、男に対する免疫はあまりないようで、下手にさわると照れて逃げてしまう。  考えたすえ、目の前にあるつむじを指でくるくるなぞってみた。 「……やめてください……。今、考えてるので……」  くぐもった声が聞こえてくる。 「考えてるって、その格好でですか」 「……謝罪を兼ねてるんです」 「――土下座ってことですか!?」  慌てて抱き起こすと、彼女はやっぱり真っ赤になって、部屋の隅に走って行った。ソファの影に隠れて、こっちの様子をうかがっている。 「せめてほしいもの教えてください!」  野生の犬のように、影からキャンと吠えた。 「うーん……」  言われるまま記憶をさらってみたが、特に何も浮かんではこなかった。かといって、適当に答えたのでは、きっとばれてしまう。何か、手頃なものを絞り出さねば。 「あ……、そういえば」  そのとき、ふいに思い出した。楓花がぴくんと反応する。 「ずっと、やってみたかったけど、やれなかったことがあるんです。つきあってもらえますか?」
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