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次の日。
会社帰りに待ち合わせをして、車で近くの山へ向かった。
山頂の駐車場に到着した頃には、すっかり日が沈んでいた。灯りのない道を少し歩くと、ちょうど良い広場を見つけたので、シートを敷いて仰向けに寝転ぶ。
静かで、空気が澄んでいた。
闇に慣れた二人の目に、遮るもののない一面の空が飛び込んでくる。
「わあ……!」
隣で楓花が歓声をあげた。
藍色の空に散りばめられた無数の星たちに圧倒されて、それからしばらくは言葉を失っていた。
「……私、天の川って、初めて見ました」
やがて、溜息とともに楓花がつぶやく。細かな星の光を反射して、彼女の目がキラキラ輝いているのが見えた。街中じゃ無理ですもんね、と笑って答える。
夏でも山の気温は低く、コートを羽織っていても寒い。お互い体を寄せ合って、ぽつりぽつりと他愛もない話をした。
こんなに近くにいても楓花が逃げない。それが単純に嬉しくて、気温に反して心は温かかった。
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