不器用な恋人たち

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 寒さで白く染まる息が頬をくすぐるほどの近さに、お互いの顔がある。  じわりと握る手に力を込めると、楓花は我に返って手を引っ込めた。いつもと同じように距離を取られて終わりかと思っていたら、彼女は体勢を変えただけで、体温を感じる距離は保ったまま。 「……楓花さんの手、冷たいです」  初対面で結婚した俺たちは、たぶん、というか絶対かなり変なんだろう。だったら、誕生日もへんてこなのが俺たちらしいのかもしれない。  観念したようにおずおずと出してきた手を握り、俺たちはまたしばらく黙って空を見つめ――……。  そして、かすかに触れ合うキスをした。  触れ合ったところから、君に伝わるといい。  二ヶ月前の自分の気持ちはよくわからない。けれど、一日一日を二人で重ねていくにつれて、彼女に対する想いが積み重なっていくのは確かに感じる。  今は、それでいいんじゃないだろうか。  だって、今が幸せで大切だと、自信を持って言えるのだから。
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