1人が本棚に入れています
本棚に追加
雫
麗らかな春の昼下がり、美月が外に出ると甲高い声がした。
?
暫く様子を眺めていたが、何も起こらない。しかし、先ほどの声は異様などころか、私が危ない気持ちになったから、只事ではない。
それにしても、私の日常はなんて、退屈なんだろう。
退屈って羨ましいワネ?と皮肉で忙しく動いている方達には申し訳ないんだけど、本当に羨ましく見えるのは、貴方だったりする。
そんな事をよく言われる。しかし、私がそれでイイと思っていないから、周りの人達とは、随分感覚がズレている。
その場にいる私は何が、周りに気に入らないのか、よくわからずにいた。
静かな夜が永い。
周りに友達はいない。私は、孤独なのか?案外、そんな暮らしはイヤではない。周りの楽しそうにウィンドショッピングしている、学生さん達は、皆何かを埋めるために買い物をしている。
そればかりしていて、多くのお金を稼ぎ、そして、私とはだから違うんだ。そう、思う。
私が、お金をそれ程欲しいと思わない。この事が全て、私が他人を妬まない訳だ。
欲しいものが沢山有る、色々買っていた10代の頃は無駄な日々だ。
沢山その読書や音楽に大金を注ぎ、全て無駄に録音して、溜まっていくダビングしたものは、もう、所持していない。沢山持っていた本を私は全て、メルカリに売り、そして、もう一切本を買わなかった。
それでも充分幸せだった。
夜は、レモンサワーで地元の美味しい唐揚げで乾杯していた。
静かな夜、そして美味しい酒。
私の舌が肥えてくる。美味しい料理と美味しいお酒。
それだけ有れば、他に何も要らない。
静かな夜に、音楽を何も掛けずに、自然の音に耳を澄ませて、カランとなるグラスの音に安心する。
グラスには水滴が滴り落ち、雫が窓ガラスにも、垂れている。
外は雨だった。
ここ暫く、雨が続くだろう。
明日も仕事か…ため息が出たが、私が納得した人生だったので、悔いは無かった。
外は雨音が、激しく鳴り始めた。
どう言う訳か、電話越しで、漢友達が、エミネムのMUSIC TO BE MURDERED BYをやかましやかに、音量を大にして、かけ流していたので、イイ加減に電話を切らせて貰った。
そう言う音楽は、不愉快だ。
その男友達は、多分元来そんな性格なんだろう。私とは真逆な人生を歩んで、異なる価値観を育み、やさぐれて育って行った。終わっていたが、しぶとく足掻いている。
彼には参るぐらいに、彼女はそのバイタリティが何処から湧き出て来るのか、謎だ。
彼の好む音楽には、彼なりの意味がある気がする。
しかし、私が生きる意味とは全然違っていた。
その違いが、永い付き合いで分かった彼の性質で、距離感だった。
最初のコメントを投稿しよう!