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「これはさっき社長にも告白したんだけど。俺は強姦罪で逮捕されるのが怖かったんだ。監督は、『一番罪深いのはお前だ』って言ったんだ」
「どう言うこと?」
彼女の言葉に思わず吹き出した。
「何よ」
口を尖らせる彼女って可愛い。呑気にそんなこと考えていた。
「だって、今の社長と同じ反応だったよ」
俺は笑いながら……
そう、俺は笑っていた。彼女の傍で笑うことが出来るようになっていたのだった。
「AVは、体外放出なんだ。それさえ知らず俺は、『お前の後は物凄かったぞ。安全日じゃなかったら、出来た子供はお前の子だ』って言われて。『もしDNA鑑定したら、出てくるのはお前のだけだ』なんて言われたから、捕まるのが怖かったんだ」
「バカね。でもね、監督が言った通りだったら嬉しい。だって私は貴方意外受け入れていないことになるから……」
彼女は解っていたんだ。もし検査をしていたら、全員のDNAが出てくることを……
でももし、俺のだけだったら嬉しいと思っていたなんて……
「俺は幸せ者だ」
不覚にも泣いていた。
取り敢えず俺はその場で、事務所で住み込みのカメラマンとして働くことになった。
彼女の部屋を開けてくれるらしい。
「まさか、結婚前の男女を同じ部屋に住まわせる訳にはいかないでしょ?」
社長はそう言いながら笑っていた。
俺の部屋は三畳ほどの所謂納戸だ。
ハロウィンの悪夢の撮影以来気まずくなった彼女と監督の関係。
それでも行き場ない彼女はあのアパートで暮らすしかなかったのだ。
そんな時に彼女は社長と再会したのだった。
モデル事務所のオープンに向けて、社長は自宅を自力で改装中だったのだ。
だから彼女も住み込みで……
「えっ!?」
俺は有頂天になっていて何も考えていなかった。
「あのー、さっきの言葉聞き逃したのですが、彼女も住み込みだったんですか?」
「そうよ。でも貴方を此処に縛り付けて置けば、彼女に手出しは出来ないでしょ?」
「あっ、そう言うことですか? 嬉しいけど、地獄だー」
「彼女は家のモデルなのよ。手出しは許されないわよ。さっきのキスの代金は後日請求しますので悪しからず」
「えっ、えっーー!?」
社長の声に反応して、俺は自分でも驚くくらいの突拍子のない声を上げていた。
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