戦慄

1/1
59人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

戦慄

 デビュー作品は、この監督に騙されたやつだ。 私の両親は連帯保証人になったばかりに、多額な借金を背負わされて自殺していた。 だから返済に回された生命保険は、全く入って来なかった。 それでも残った借金のために、私は働くことを余儀なくされていた。 でも奨学金を出してくれる人がいて、どうにかこうにか大学生なれた訳だ。 その人がタレント事務所をやっていたので、私はアルバイト感覚で広告などのモデルをしていたのだった。 私の両親は本当の親ではない。 育児放棄で餓死寸前の時、母親が逮捕された。 色々な施設をたらい回しにされていた私を引き取ってくれたのがその両親だった。 お人好しの二人が目を付けられ、財産没収の上に多額な借金を背負わされた訳だ。  その日、私は初めてのグラビアの撮影で新宿のスタジオにいた。 中には椅子が一つだけ置いてあった。 ちょっと高めな、カフェなどに置いてあるようなのカッコいいヤツだった。 でもそれが監督の作戦だったのだ。 まずその椅子に座って足を組みポーズを決める。 次にモデル立ちになって、又ポーズをキメる。 その度に拍手喝采。 私は次第に有頂天にさせられた。 その時は既に手玉に取られていたようだ。  再び椅子に手を掛けた途端、腕を掴まれた。 肘を座面に着かされ、もう一つの腕と交差され手錠を掛けられる。 逃げようと体勢を変えたら、椅子の背凭れ部分にチェーンが回され束縛された。 一瞬の出来事にパニックになりながらも頭を付けると、足の間から僅かに後ろが見える。 そして其処には男性の姿が垣間見えた。 私はすかさず足を閉じた。 でも男性は間一髪のところで膝を入れて来た。 そして僅かに空いた隙間から両膝を入れられ、それで足を開かされた。 手錠を外そうとしても椅子が邪魔をして逃げられない。 私は蛇に睨まれた蛙のように、全く身動きが取れなくなっていた。 手足でどんなにジダバタしても無駄だった。 いきなりビキニを引き摺り下ろされる。 そして私の足の間からズボンが落ちるのが見えた。 (遣られる!!) 私はそう思うが早いか下腹に力を入れ、攻撃態勢を取り身体を引き締めた。 咄嗟の行動だった。 でもどんなに力んでも、永くは続かない。 ふと気が抜けた瞬間に、バックからあてがわれた物を一気に挿入されてしまったようだ。  『うっ!!』 それは初めて体験する凄まじい衝撃と激痛だった。 私はその時、ヴァージンだったのだ。 育ての親の借金のために働きづめだった私には恋を楽しむ余裕などなかったのだ。  『ヒーーーっ!!』 前技もなく無理矢理捩じ込まれた時、思わず悲鳴を上げた。 『あっ、イヤーーー!!』 強烈な激痛に、まともな声も出ない。 犯されてしまったことに焦って、ただ啼き叫ぶことしか出来なかったのだ。 男性には解る筈もない、身体が引き裂かれ千切れるような痛み。 膝がガクガクと震える。 歯がガタガタと異常な音を立てる。 其処でそうやっているのがやっとの状態だったのだ。 あまりの痛さにうめき声を上げる。 それでも進撃を止めてくれない。 力任せにグイグイ食い込むそれは、私の中で尚も暴れようとしていた。 チクチク、ヒリヒリ、ジンジン。 常に襲いかかる激痛。 それは今まであじわったことのない最大級の苦痛だった。 (あぁ、ヤバい。妊娠する) 私にだってそれくらいの知識はあった。 (もう遅い? ) 私はそれでも、又反撃しようとしていた。  その時、ソイツは腰をピッタリ押し付けた。 私はここぞとばかりに下っ腹に思いっきり力を入れた勢い良く外に弾き出された。 (勝った) そう思った。 でも腕の束縛は続き、今度は私の腰を両手で押さえながら又それで接触してきた。 そのままの状態で足の付け根に手を置かれ、下半身がソイツの腰の方向に引かれた。 『イヤーー!!』 遣られることは解っていた。 だけど私はまだ抵抗を繰り返していた。 必死に逃げようとしていたのだ。 そんな努力も報われず、少し上がったそれを目指してソイツのあれがやって来る。 二度目は意外とスムーズだった。 さっき感じた激痛は少し軽減されていて、すぐに陰部を密着させられた。 そして勝ち誇ったかのように、今度は下腹部に回された手まで使って激しく腰を打ち付けた。 ソイツが腰を動かす度に深く確実にのめり込む。 その都度起こる膝の屈伸運動に、私の下半身が持って行かれる。 『イヤーーっ!! ヤメテーーっ!!』 もう逃げることなんて出来ないと判りながら啼き叫ぶ。 それでもソイツは、遣りたい放題遣っていたのだった。 目の前にいる監督に救いの手を差し伸べようと腕に力を入れる。 でも監督はくわえ煙草で斜に構えて動いてくれなかった。  『あぁー、こんなに締め付けられるの久し振りだ。マジに気持ちいい!!』 ソイツが雄叫びを上げる。 『わぁ、いいな。俺にも遣らせてくれ。百戦錬磨のアンタが言うなら間違いない』 私が椅子の頭の部分からの手を上げないように手錠を掴んでいた男性が言った。 『あぁいいよ。もうちょっとで終わらせるから』 ソイツはそう言った後で更に凄まじく私に襲いかかった。  『いいか、その手は絶対に放すなよ。コイツ何をするか判んねえからな。初めての時だって一度遣られたら諦めるものなのに……な?』 暫くして、もう一人の男性が私の後ろに立った。 でもその人は、今まで椅子の向こうにいた人ではない。 だってまだソイツはそのままの状態で、私を拘束していたのだから…… (三人!?) 私はその時初めて回される意味を知った。 (あぁイヤだ。一人だけでも苦痛なのに……後何人居るの? 一人? それとも二人? いや、違う。監督まで入れたら、多分後三人だよ……) 私は何時終わるかどうかも判らない撮影に頭を抱えた。 (そうだ。撮影だったんだ。じゃあ、カメラマンも!?) そう思った瞬間、又股間から足が見える。それらは複数あった。 その内の一人はもう既にズボンは脱いでいるらしく、最初の人のが抜かれた後交代するようにすぐに局部をそれでまさぐっていた。 私は又拒否をしようと下腹部に力を入れた。 でもソイツも平然と、それをめり込ませて来た。 『本当だ、気持ちいいー。まるで中が絡み付いてくるようだ』 私が幾ら頑張ってみても無駄な抵抗だったようだ。 『ああ、気持ちいい。こんなに力まれると此方も本気になるから、グイグイ締め付けられるな。こんな感覚初めてだ。だって俺で三人目だよね。まるで初めてのようだ。この女、マジで凄い!!』 そう…… 私はとうとう、三人の男性の餌食になっていたのだった。  結局私は三人のAV男性俳優の思うがままに弄ばれたのだった。 そしてその男性俳優が、今目の前にいる撮影クルーだったのだ。  何故目隠しなのか今やっと解った。 やはり私に素顔をさらけ出したくない人達だったんだ。 この三人は特に、婦女暴行罪として逮捕されされないかと魚籠付いていたのだった。 そう…… それは確実に犯罪行為だったのだ。 何故八年間待ったのか? 私はその事実まで知らずにいた。  訴えたかった。 でも反故にされた。 私の両親は借金を背負わされて自殺していた。 その借用書が何故か監督の手にあったのだ。 その借金をAVで払うようにと言われたようだ。 私は監督に売られたことになる。 だから何をしてもいいと思っていたようだ。  『タイトルは決まっている。いいか、お前は今日から橘遥だ。戦慄!! 橘遥処女を売るだ!!』 『えっ!? 聞いてないよ。彼女処女だったのか? だったら犯罪じゃないか!?』 『お前等、気付かなかったのか? この娘が流したアレに』 監督はそう言いながら、目配せをした。 其処を見ると、私の純潔な証があった。 『ヤベー。コイツ本当に初めてだ』 『あぁ、だからあんなに拒んだのか?』 男達は震えていた。 『俺達三人は犯罪に手を染めたことになるのか?』 『そうだよ。俺達は一蓮托生だ。そのことを忘れるなよ』 監督は、男性俳優達に向かい吠えていた。 『でもコイツは、どう見ても未成年だ』 『大丈夫だ。コイツは今日二十歳の誕生日なのさ。だからこの日を待っていたんだ』 『こりゃとんだバースデイプレゼントだ。俺達はただ、後腐れのない生粋の女子大生と生で遣らせてくれって言うから来ただけなのに』 『でも最高だっただろう。何も付けないで女を犯すのは』  『そりゃ、勿論最高だよ。コイツ無理に締め付けるんだ。それが却って俺達が悦ぶことなんて知らずにな』 『知らないのが当たり前だったのか? 本当に初めてだったなんて』 『えっ、そんなに締め付けたんか? そんだったら、一緒に遣らせてもらえば良かったな』 監督が突拍子のない声を出した。 『あ、妊娠するとか気にするな。事務所から安全日だって聞いている。だから生で遣らせたかったんだ』 (生? 何も付けないで遣らせる? 安全日って何?) 私は私の知らないところで商品として売買されていただけだったようだ。 『安全日か? あぁ、だったらもう一回遣って出してぇ。コイツマジで凄いんだ。俺、あのままイキたかったんだ』 最初の男性が言った。 『だったら、早く遣れ。此処を借りられるのは後一時間ちょいだ』 監督がそう言ったかと思うと、私の体は俳優陣の脱ぎ散らかした服の上にうつ伏せにされて又がんじがらめに拘束された。  『待った。先に俺に遣らせてくれ。誰かこのカメラ頼む』 そう言ったが早いか、立て膝で腰を密着させすぐに奥まで入るカメラマンの若い身体。 それは身体の中を通り抜け、一番奥の壁をリズミカルに叩いた。 『あん』 その時私は不思議な言葉を発していた。 『さっき、コイツの顔を見た時ゾクッとしたんだ。苦痛に喘ぐ表情はただ者じゃなかった。そうか、初めてだったんか? だからあんなに拒絶しようとしていたんか? そりゃそうだ。いきなり……、しかもあんなぶっといのを捩じ込まれたらヒイヒイ言いたくもなるよな。きっと彼処が千切れそうだったんだろ?』 カメラマンは御託を並べた。 『悪かったな。社長がいきなり遣れって言ったからだ』 『そりゃそうだ。前技なんか遣ってたら、コイツは逃げていたよ。どうだ生は気持ちいいだろ?』 『先に難攻不落な要塞を突破したからかな? そんなことよりこの締め付け加減だ。あぁー、本当に気持ちいい!!』 カメラマンも喘ぎ声を上げながら、私の身体を堪能していた。 私には彼がイッたのが解った。 傷口を消毒するみたいに物凄く滲みたからだった。 案の定、次に交代したのは監督だった。 『もっと力を入れろ。俺は気が短いんだ。みんなと同じ思いをさせないと後が怖いぞ』 私は仕方なく、最大限の力を込めた。 『あぁ、本当だ。マジに気持ちいい!! コイツはいい拾い物をしたな』 『拾い物!?』 私のその言葉に一瞬声を詰まらせた。 『何でもない。ホラ下っ腹に力が入ってないぞ、真面目に遣れ』 監督は上手く誤魔化しながらも、私に最大級の持て成しを催促していた。 『いいか、訴えるなんて考えるな。此方にはお前さんの両親の借用書がある。お前さんの身体でそれを払って貰おうとしているだけだからな』 監督は凄味を利かせて言い放った。  私は結局其処にいた全員の言いなりになって、時間の許される限りみんなの腰を悦ばせていたのだった。 それは二十歳の誕生日に行った、最低最悪なバースデイプレゼンショーだった。 監督は天涯孤独の私に目を着け、ヴァージンを俳優達に奪わせた。 それを録画したビデオで大儲けを企んでいたのだった。 グラビアは袋とじで、苦痛に喘ぐ顔が購買力をアップさせたそうだ。 私は怖くて本屋にも近付けなかったのだが…… でもこれを見たら、タレント事務所の社長が救い出してくれると信じていた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!