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二人side再会
俺はすぐに、社長から聞いた住所を頼りに彼女の親友が経営していると言うモデル事務所に向かった。
其処からは笑い声が漏れていた。
『お前のチェリーを捨てさせてくれ。って彼迫られていたのよ。だから未経験だと思ったの。その通りだったでしょう?』
誰かが言った。
俺はその時、そのチェリーに反応していた。
それはあの時、ヌードモデルの彼女が言った、チェリーボーイだった。
『あの……、チェリーボーイって何ですか?』
その言葉に思わず仰け反った。
(ありゃー、俺が知りたいことを聞いてる)
だから俺は余計に聞き耳を立てていたのだった。
『ぷっ!!』
其処にいた全員が吹き出したようだ。
(そんなに可笑しいことなのか?)
俺はその時、自分自身が笑われているような錯覚を覚えていた。
『田舎の高校生が、普通知らないわよねー』
その声に聞き覚えがあった。
それは、俺が愛してやまない橘遥さんだった。
『チェリーボーイって言うのはね。日本だと未経験者という意味かな? でも英語では違うのよ。同性愛者での未経験って言う意味なのよ』
(同性愛? 未経験者? そうか……、そうだったのか。彼女は俺がゲイだと思って……だから彼処で誘ったのか? 同性愛者を彼女の魅力で墜そうとして。それを誇るために)
あのトイレは、そう言う人達の溜まり場だって聞いたことがある。
広いし滅多に人が来ないから好都合なんだって。
もしかしたら彼女は俺に飽きて、もっと刺激が欲しくて監督の仕事をさせようとしていただけなのかも知れない。
『週刊誌にゲイだと書かれていただろう? それも未経験だからチェリーボーイってタイトルだったんだ。ま、知ってる者は知ってるって感覚かな?』
『みんな知っていたんですね』
『それが売りって訳ではないけど、誰が先に落とすかって賭けになっていたのかな? だから、沢山指名されちゃった訳よ』
社長らしき人がが答えていた。
(週刊紙? チェリーボーイ? あっ、もしかしたらジン?)
俺はその時思い出していた。
疑惑のチェリーボーイと週刊紙に書かれていた、歌舞伎町のナンバーワンホストのことを……
(どうして彼が此処に居るのだろう?)
俺は首を傾げた。
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