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アイの呼び声
「よくものうのうと顔を出せたわね」
久しぶりに会った母は、落ち窪んだ目でぎょろりと僕を睨んだ。
「あの子の三回忌じゃなかったら、こんなところに来なかったわ。どうして?どうして来たのよ、ねえ。あんたのせいであの子は死んだのに!」
「おい、やめろ!」
固まったように動けない僕の手を引っ張り、父は母に言った。
「いい加減にしろよ。一番辛いのが誰だと思ってるんだ」
「はあ?」
自分を産んだはずの母は、少しだけ嘲るように目を三日月型に歪めた。自分の方が辛いのにと言いたかったのか、それとも何を馬鹿なことを言ってるんだと見下したのか、どっちだろう。
いずれにせよ、僕はもう彼女の顔を見ることができなかった。集まった他の親戚達の目も痛い。突き刺さるような視線とは、まさにこのことだ。
――どうして来たのかって?……決まってるじゃないか。
僕は父さんの服の裾をぎゅっと掴んで、ただひたすら俯いていた。
――僕のせいで兄さんは死んだんだから、当たり前だろ。
ああ、でも。本当は来るべきでなかったのかもしれない。きっと、此処にいるほとんどの人が思っているはずなのだから。
僕が生きているのは間違っている。生きているべきは、兄さんの方だったのに――と。
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