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兄弟といっても、色々なタイプがいるだろう。双子とそうでない兄弟はやはり大きく違うのだろうし、性別の違う兄弟も独特な関係性があるに違いない。
僕達の場合、年が離れていたから喧嘩友達のような関係になることはなかった。むしろ、面倒見がよくて優しい兄さんは、僕にとってはもう一人のお父さんみたいなところがあったかもしれない。
兄さんは、僕とは何もかも違っていた。年下の子供達に本当に優しくしてくれたし、小学生がやるような遊びにも笑顔で付き合ってくれた。友達をまじえて兄さんと一緒に鬼ごっこやゲームをしたことも一度や二度ではない。そしてただ面倒見がいいだけではなく、運動も勉強もできてめちゃくちゃイケメンという超ハイスペック。
だからこそ、母さんにとっても自慢の息子だったのだろう。ジェニーズ事務所のオーディションにこっそり応募したら書類審査通っちゃったのよ!話と有名な大学のスポーツ推薦にもう声がかかってるのよ!話と学年トップを三回連続で取ったのよ!あたりの話は母さんの三大自慢話の一つである。まあ、兄さんはそんな母さんに少々辟易していたようだが。
だからこそ、僕はそんな兄さんを尊敬すると同時に劣等感を抱くことも少なくなかったのである。僕は兄さんと比べるとチビだし、顔も地味だし、運動も勉強も平均的にしかできない。それでも何か一つ得意なことがあれば違ったかもしれないが、ものすごく絵が上手いとか絶対音感があるとか習字ができるとかそういうこともない。精々、小説とも呼べないような拙い文章をノートにひっそりと書くくらいだった。作文で先生に褒められたことはあるけれど、何か賞を取ったり特別な文集に乗ったりしたことがあるわけでもなし。
『何で兄さんはなんでもできるのに、僕は全然そういう才能がないんだろ。僕も、兄さんみたいな天才が良かったな』
昔。僕が肩を落として兄さんにそうぼやいたことがある。すると兄さんは、うーん、と少し渋い顔をして言ったのだった。
『俺は天才じゃないし、天才って言われてもあんま嬉しくないなあ』
『なんで?天才って、才能があるってことだよ?褒められてるんだよ?』
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