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桐矢くんと珠里ちゃん。私とはクラスメイト兼部活仲間という間柄のこの二人は、二ヶ月ほど前から付き合っている。珠里ちゃんから告白したのだとか。
その前から彼女側の気持ちは私も知っていたので、二人が本当に交際する関係になったと知った時にはすごく嬉しかったし、めちゃくちゃテンションが上がったことを覚えている。
それで、彼らが今身に着けているペアリングは、誕生日のプレゼントとして珠里ちゃんが希望し、二人で選んだものなのだとか。
「ペアリングとして買うのは分かるけど、まさか桐矢くんまで学校につけてくるとは思わなかったよ。意外とそういうのいけるタイプだったんだね」
私達が通っている高校は、服装関連の校則はそれほど厳しくない。目立たないデザインのリングや細身のネックレス程度のアクセサリーを身に着けている生徒は他にもちらほらいるので、先生に叱られたりすることはないと思う。
ただ、桐矢くんは元々人目を気にして目立つことを嫌うタイプだ。本人もいじられることを懸念している様子だけれども、それならばペアリングなんて、少なくとも学校には着けてこないはずだ。
「……俺は抵抗あったんだけどさ」
きまり悪そうに薬指をもう片方の手で覆い隠すのは、無意識の動作なのか。桐矢くんが目を泳がせながら言う。
「珠里が着けてっていうから……」
「いいじゃん。誕生日だから何でもわがまま言って良いって、桐矢が言ったんだよ?」
桐矢くんの言い訳じみた言動を、珠里ちゃんがにやにや笑いながら牽制する。何とも微笑ましい光景だ。
どうやら桐矢くんがペアリングとして想定していたのは、デートなどの時に身に着けるイメージだったみたい。けれども、珠里ちゃんは普段からお揃いで着けていたかったようだ。それで、桐矢くんが珠里ちゃんの希望に合わせた、と。
「もう、二人とも羨ましい! 一から十まで羨まし過ぎる!」
私の口からは、もはやその言葉しか出てこない。このわずかな間のくだりで、「羨ましい」という言葉を一体何回口にしたことか。
何故こんなにも騒いでしまうほどに羨ましいのか。
二人のような関係になりたい、付き合いたい人が、私にもいるからだ。
相手はちょっぴり曲者。
知り合ったばかりでもないのに未だに距離感が掴めず、気持ちも分からず、手が届きそうで届かない人だ。
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