妹と綻んだ火花

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私たちは誰と戦っているのか、 なんのために戦っているのか、 そんなことすら、もう誰もわからなくなっていた。 ただ、毎日生き延びることに精一杯で、 見栄も装飾も投げ捨てた。 黙って暗い防空壕の中。 私は幼い妹とふたり。 耳を塞ぎたくなるほど(つんざ)く警報が鳴って、あたりは大人も子供も関係なく走り回った。 間もなく、遠くの方で煙が上がり、 遅れて近くで爆発音が轟いた。 何も出来ずに見上げた空には、 一面の灰とオレンジ色の花びらが漂っていて、 あっという間に、私の街に降りかかり、 木製の家屋を火達磨にした。 あちこちから聞こえる悲鳴が、 耳の中で反響して、瞳を閉ざしたその時、 左手が引かれた。 彼女はつぶらな瞳でこう言った。 「お姉ちゃん、花火だよ!」 妹はいつでも笑顔だった。 立ち止まる私の手を引いて、 彼女は私を土の中へ導いた。 四人入れるはずの防空壕の中。 私は幼い妹とふたり。
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