恋愛裁判

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 有紀(ゆき)が、YESともNoとも取れる返事をして、再び曖昧な表情を作る。  しかもその心は完全に目の前の弁当に向かっていて、俺の言葉の入る余地などなさそうだ。  らしいと言えばそうだけど。  だから勘違いされるんだよ。  まったく。 「なぁ、有紀。俺の話、聞いてる?」 「そんな大きい声で話してたら、聞こえるに決まってるでしょ」 「じゃあ、その顔やめろよ」 「どの顔?」 「ほら、それ。何事も白黒つけずに穏便に済ますのがこの世の善だと言わんばかりの顔」 「長っ。てか、健太郎(けんたろう)は違うの?」 「俺の辞書に”曖昧”という文字はない」 「へぇ〜。なんかすごいね」 「感心してる場合か」  有紀の席は3年D組の窓側後ろから二番目。  軽く外ハネさせた肩上までの黒髪と、オン眉の前髪が、気の強い猫みたいな凛とした顔立ちをより際立たせている。  俺は本題に入ろうと、あらかじめ購買部で買っておいた焼きそばパン片手に、有紀の前の座席に後ろ向きに(またが)った。  昼休みは13時40分まで。  あと50分でこの話に決着をつけないと。
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